絵画:ローレンス・アルマ=タデマ 「フェイディアスとパルテノン神殿のフリーズ」 (1868)
Sir Lawrence Alma-Tadema Phidias and the Freize of the Parthenon, Athens 1893
MIDI:ヘンデル 『マカベウスのユダ』より 「見よ、勇者は帰る」


アルマ=タデマは1862年に初めてロンドンを訪れた時、大英博物館でエルギン・マーブルズを見ました。

エルギン・マーブルズとは、世界遺産となっているギリシャのアクロポリス遺跡のパルテノン神殿の壁をっていた大理石の一部である、彫刻のコレクションです。
それは、紀元前5世紀の彫刻家フェイディアス作でした。
19世紀初めエルギン卿によってイギリスに持ち去られ、1816年以来エルギン・マーブルズとして大英博物館に展示されています。

アルマ=タデマがこの彫刻群を見た時、英国の学者や芸術家達の間で、古代ギリシャでは、彫像は彩色していたかどうか、またもしそうなら現代の彫刻家達もそれに倣うべきかどうか、激しく論じられていました。
当ギリシャ彫刻といえば純白のイメージだったので、彫刻の彩色問題は多くの人にカルチャーショックを与えました。

この絵画は、紀元前430年代、完成間近の神殿で行われている「内輪の披露(プライヴェイト・ヴュー)」を描いています。
アルマ=タデマは博物館で、フリーズの彩色跡を研究し、見事にこの絵画で再現しました。

精巧に組まれた足場の上でフェイディアスの傑作を観ている人の中には、行政長官ペリクレスやその愛人のアスパシア、ペリクレスの甥で手のつけられない悪童であったアルキビアデスの姿があります。
そしてロープの内側で巻物を手にし、人々に作品を見せているのは、彫刻家フェイディアスその人です。

2004年夏に開催されたアテネ・オリンピック。
ギリシャは、98点の彫刻コレクション「エルギン・マーブルズ」を、アテネ五輪を機に返してほしいと英国と交渉をしました。
けれどギリシャに返還すれば、大英博物館のコレクションについて、エジブトなどからも同じ要請がくるだろうことから、英国はしぶり、結局実現には至りませんでした。