絵画:ローレンス・アルマ=タデマ 「神殿への道」 (1882)
Sir Lawrence Alma-Tadema The Way to the Temple 1882
MIDI::「蛍の光」によるバロック音楽様式「フランス風序曲」

Copyright (C) 1995-2003 by KATOH Moritoshi All Rights Reserved


扉の向こうを、神殿へ行く人々が通り過ぎています。アルマ=タデマの絵画にしばしば登場するバッコス祭に参加する人々でしょう。

この絵画は、2004年夏のアテネ・オリンピックの終わる頃、トップページに飾ったので、流れている音楽が「蛍の光」です。
扉の向こうの海と、通り過ぎていく華やかな衣装の人々が、宴を終えて去っていく人々に思えました。
その時に、オリンピックにちなんだ月桂冠についてのギリシャ神話について書きました。


オリンピックと月桂冠の神話

手前の少女や、扉の向こうを歩いていく人々は月桂冠を被っています。
この月桂樹には、神話があります。

太陽神アポロンは弓の名手でした。
そんなアポロンは小さな子どもの姿をした神エロス(キューピッド)の、小さな弓をからかいました。

エロスはそれを快く思わず、アポロンにその小さな弓で仕返しをしました。
愛の女神アフロディテの息子エロスの弓は、不思議な力を持っていました。
ハート型の金矢で胸を射ると、たちまち激しい恋に落ちてしまうのです。
反対に鉛(なまり)の矢で胸を射ると、どう愛されても相手を好きになれないのです。

エロスは金の矢をアポロンの胸に、そして鉛の矢を、河の神ペネイオスの娘ダフネの胸に放ちました。
たちまちアオロンは美しい河の娘に激しい恋心を抱きますが、鉛の矢のあたったダフネは、アポロンを見ると逃げ出しました。

けれどある日、ダフネはついにアポロンにつかまりそうになります。
ダフネは必死に、父である河の神に助けを求めました。
河の神ペネイオスは、娘の願いを聞き届けました。

アポロンは驚きました。
抱き寄せたのはダフネではなく、一本の木に変わっていたのです。
それが月桂樹でした。
アポロンは三日三晩その木の下で泣き続けた後、木の枝を折り、冠を作りました。

「愛するダフネ。私はずっとお前を忘れない。その証におまえの枝で冠を作り、いつまでも私のそばにおいておく。そればかりではない。戦場で、あるいは競技場で、素晴らしい活躍を遂げた者には、お前の枝の冠を与え、頭を飾らせよう」

古代オピンピックで、勝者の頭に月桂樹の冠をのせるようになったのは、この故事にちなんだものです。

ただし今回のアテネ・オリンピックでは、月桂樹ではなく、平和の象徴であるオリーブが使われました。