絵画:ジョルジュ・バルビエ 「ペトルーシュカ」
George Barbier : Petrouchka



MIDI:イーゴリ・ストラヴィンスキー 『ペトルーシュカ』より 「ロシアの踊り」
Igor Stravinsky : 'Danse russe feom "Petrouchka"




 「ペトルーシュカ」(1911年)
 Petrouchka
 音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
 美術:アレクサンドル・ブノワ
 振付:ミハイル・フォーキン



Vaslav Nijinsky in 'Petrouchka' (1911)


 ペトルーシュカはロシアの民衆的な人形劇の愚かでこっけいな主人公です。
 謝肉祭でにぎわうサンクト・ペテルブルクの大市。見世物小屋やいろいろな屋台が立ち並び、賑わっていました。
 そこに見世物小屋の親方(人形使い)が登場し、見世物小屋から三体の人形を取り出してきて、見せます。かわいいバレリーナ、彼女に恋をする風采のあがらないペトルーシュカ、三日月刀を持った強そうなムーア人です。
 ペトールーシュカがバレリーナに恋を打ち明けると、バレリーナは戸惑って逃げてしまいます。悲しみに打ちひしがれるペトルーシカ。
 一方バレリーナの方は、ムーア人に言い寄ります。2人に嫉妬したペトルーシュカはムーア人の部屋に飛び込み、おどしますが、逆に三日月刀をふりかざしたムーア人に追いかけられ、群集の集う広場に飛び出します。そしてムーア人の刀の一撃で、哀れにも殺されてしまいます。
 それを見た群集は人殺しだと騒ぎ出しますが、駆けつけた親方が、ペトルーシュカを抱き上げ、それがおがくずのつまった操り人形だと見せて、群集を安心させました。
 祭りが終わり、広場には誰もいなくなります。親方は人形のペトルーシュカを抱えて見世物小屋に運ぼうとしました。その時、見世物小屋の屋根の上にペトルーシュカの幽霊が現れたのです。親方は肝をつぶし逃げ出しました。

 初演は1911年のパリのシャトレ座。
 ペトルーシュカをニジンスキー、バレリーナをタマラ・カルサーヴィナ、ムーア人はアレクサンドル・オルローフ、親方はエンリコ・チェケッティという豪華なキャストでした。
 ニジンスキーはグロテスクなメイクをし、手足の間接がはずれたような動きで操り人形を、マイムによる悲痛な表現で人間の心をと、ペトルーシュカの人形と人間の二面性を見事に演じわけ、人々を深く感動させ、振付をしたフォーキンも絶賛しました。

 この成功の時は、誰も思いも寄らなかったと思いますが、ニジンスキーが見事に演じた『ペトルーシュカ』は、後のニジンスキーの悲劇をどこか暗示しています。
 親方の意のままに踊る人形、人の心を持ちながら壊され、人形として片付けられようとした瞬間、その幽霊が現れる。
 この舞台の2年後、ニジンスキーはロシア・バレエ団の南米公演中にロモラ・ド・プルスカと結婚し、バレエ団の主催者ディアギレフの激しい怒りをかい、バレエ団を解雇され、永遠に舞踊の道を断たれることになるのです。




Vaslav Nijinsky in 'Petrouchka' (1911)