アンドレ・マルティ 「青い鳥」 1945年
André E. Marty, L'Oiseau Bleu, 1945.


音楽:ロベルト・シューマン 『子どもの情景』より 作品15-7 「トロイメライ」
Robert Schumann, Kinderszenen, Op. 15, No.7 "Traumerei"






「思い出の国」の小さな家に、おじいさんおばあさんがいました。
「おじいちゃーん!おばあちゃーん!」
 チルチルとミチルは2人に駆け寄り抱きつきました。

「おじいちゃんもおばちゃんも死んでしまったんではないの?どうしてここにいるの?」

「死んでしまってもね、おまえたちがおじいちゃんたちのことを思い出してさえくれたら会えるんだよ」
「妹たちや弟たちもいるよ。会っておやり」

 おばあさんが家の中に向かって呼びかけました。

「おにいちゃぁん!おねえちゃぁん!」
 小さい時に死んでしまった弟や妹たちが、小さな時のままで次々に出てきて、チルチルとミチルに飛びついてきました。
 みんな大喜びで、抱き合ったりキスしあったり、踊ったり跳ねたり。

 チルチルは家の窓にさがった鳥かごの中に青い羽をしたツグミがいるのを見つけました。
「おじいちゃん、おばんちゃん、この小鳥、もらってもいい?ぼくたち、青い鳥を探しているの」
「いいとも。持っておいで」

 そしてみんなで家の中でごちそうを食べました。
 家の中も、家具も食器も懐かしいものばかりでした。

 時計が8時半を打ちました。
 チルチルは妖精との約束を思い出し、立ち上がりました。

「9時15分前に光の精さんが待ってるんだ。魔法のおばあさんから聞いたんだ。約束したんだよ。ぼくたち、もう行かないと」

 そしてもらった青い鳥の入ったかごを持って、大好きな人たちに別れを告げました。

 おじいさんおばあさん、弟妹たち、みんなが手を振って見送ってくれました。

「毎日おいでよ!」
 おばあさんが言います。

 弟たち妹たちもハンカチをふりながら言います。
「さようなら、チルチル。さようなら、ミチル。忘れないでね。さようなら。また来てね。またね。さようなら。さようなら…」

「さようなら、さようなら!」
 チルチルとミチルも手を振りました。

 思い出の森を出、「思い出の国」の札がかかった大きな木の下に2人は立ちました。
 チルチルはかごを見ると、鳥の色は青から黒に変わっていました。