虎
ウィリアム・ブレイク
岩波文庫 イギリス名詩選 平井正穂編
虎よ! 夜の森かげで
赫々
The Tyger
William Blake
- Tyger! Tyger! burning bright,
- In the forests of the night,
- What immortal hand or eye
- Could frame thy fearful symmetry?
- In what distant deeps or skies
- Burnt the fire of thine eyes?
- On what wings dare he aspire?
- What the hand dare sieze the fire?
- And what shoulder, and what art,
- Could twist the sinews of thy heart?
- And when thy heart began to beat,
- What dread hand? And what dread feet?
- What the hammer? What the chain?
- In what furnace was thy brain?
- What the anvil? What dread grasp
- Dare its deadly terrors clasp?
- When the stars threw down their spears,
- And watered heaven with their tears,
- Did he smile his work to see?
- Did he who made the Lamb make thee?
- Tyger! Tyger! burning bright
- In the forests of the night,
- What immortal hand or eye
- Dare frame thy fearful symmetry?
ウィリアム・ブレイク(1757-1827)は、ロンドンの靴下商人の子として生まれました。
幼い時から、神や天使が現れる幻視を体験したと言われています。
早くから絵や詩の才能を示し、父の理解あるはからいで、彫刻師バザイアの弟子となり、7年後には銅版画家として独立し、以後本や雑誌の挿絵を彫板して、死ぬまで版画師として生計を立てながら、自分の作り出した物語を、詩と絵で表現しました。
30歳の頃に、『ティリエル』『セルの書』『無垢の歌』『天国と地獄の歌』など、自作の詩と絵を組み合わせたシリーズを発表しました。
ブレイクの芸術は、生前には少数の友人を除いては理解されませんでしたが、20世紀に入る頃から、詩人との資質も認められ、再評価されました。
美しい猛獣に惹かれてしまいます。
しなやかで綺麗な、それは安全なところで観察できるからこそ、美しいと思うのかもしれませんが。
この詩のページで取り上げたシルヴィア・プラスの詩「追跡」は、闇の中に潜む豹を描いていますが、虎は優雅な動きの豹より、もっと荒く獰猛で、それでいて炎のような美しさを持っているような気がします。
豹が美しいバレエダンサーなら、虎は更に奔放で情熱的なフラメンコ・ダンサーをイメージします。たとえばジプシーの血をひく不世出のフラメンコ・ダンサー、ホアキン・コルテスのような。
職人の家に生まれ、彫刻家に弟子入りしたブレイクの「虎」は、虎を神が作り出した最高の芸術作品として描いています。
けれど宗教画のような崇高な創作ではなく、もっと生々しく、虎を作り出す溶炉の赤く燃え上がる炎や熱さも伝わってきて、それは地獄の風景にもつながりました。
恐ろしいけれど美しい猛獣の、金色に浮かび上がる姿が、最後に目に見えるようでした。
なお、50年代SFを代表する鬼才アルフレッド・べスターの代表作『虎よ、虎よ!』は、このウィリアム・ブレイクの「虎」を下敷きに書かれています。
ウィリアム・ブレイク画 “Tyger of Wrath”
関連リンク:National Gallery of Victoria
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