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  金色の嘘

2000年/イギリス・アメリカ・フランス
監督:ジェームズ・アイヴォリー
製作:イスマイル・マーチャント
原作:ヘンリー・ジェイムズ
撮影:トニー・ピアース=ロバーツ
音楽:リチャード・ロビンス

キャスト
シャーロット:ユマ・サーマン
マギー:ケイト・ベッキンセール
アメリーゴ公爵:ジェレミー・ノーザム
アダム:ニック・ノルティ

STORY
シャーロット(ユマ・サーマン)は、元の恋人ア メリーゴ公爵 (ジェレミー・ノーザム)と親友マギー(ケイト・ベッキンセール)の婚約を知る。 昔の関係を隠して 結婚式に訪れたシャーロットに、マギーの父であり大富豪のアダム(ニック・ノルテ ィ)が求婚し 、4人の微妙な夫婦・親子関係が成立した。数年後、マギーとアダムの親子関係に入 り込めないシャーロットと アメリーゴは、再び親密になっていく。疑いながらも目をそらしていたマギーは、あ る日思いがけなくも証拠の品を 手に入れてしまう。



格調高く美しい純文学作品でした。
19世紀末から20世紀初頭の欧米上流社会を舞台に、男1人女2人の恋愛。男は貞淑な 妻がいながら、 才色兼備の女性へ思いを寄せるという不倫を描いた文芸作品ですが、同じテーマのヴィ スコンティ監督の 『イノセント』、スコセッシ監督の『エイジ・オブ・イノセンス』、それぞれ雰囲気 が違うのがおもしろいです。
どこかハリウッド的華やかさのある『エイジ〜』はともかく、『イノセント』と『金 色の嘘』は重厚な文学の 香りとヨーロッパ独特の華やかさがあります。イタリアと英国、ヴィスコンティとアィ ヴォリーの空気と香りは全く 違いますが。
ヴィスコンティとアィヴォリー、どちらの映画にも香水が似合いますが、ヴィスコン ティはよりデカダンス、 アィヴォリーにはわびさびのような落ち着きがあって・・・。上流社会の不倫を描い た『イノセント』と 『金色の嘘』よりも、間接的直接的な違いはあるものの同性愛を描いた両監督の代表 作『ベニスに死す』と 『モーリス』の方が比較しやすいかもしれません。両作品とも素敵です。
『金色の嘘』の原作者ヘンリー・ジェイムズの作品の映画は、ジェーン・カンピオン 監督の『ある貴婦人の肖像』と、 イアン・ソフトリー監督の『鳩の翼』がありますが、こちらも『金色の嘘』と比較す るとおもしろいです。 『ある貴婦人〜』は女性の香り、体臭さえも感じる生々しい女性の香りを感じました。 『鳩の翼』は愛の矛盾、 どうにもならない心の変化について、深く深く考えさせられました。この2作品に比 べると『金色の嘘』は インパクトが薄いかもしれません。
『金色の嘘』の登場人物、イタリア没落貴族のアメリーゴ、才色兼備だけれど財産を 持たないシャーロット (アメリーゴの結婚前に恋人同士)、アメリカ大富豪の娘でアメリーゴの貞淑な妻マ ギー。実はこの3人も、 この3人の恋自体も目新しくはないのですが、ここにもう1人登場人物が加わり、こ の作品を独特の物にしています。 それはマギーの父親でアメリカの大富豪、老齢のアダムです。この作品はトリオ(三 重奏)ではなく、カルテット( 四重奏)なのです。
アダムは美しいだけではないシャーロットの素質を見抜き、老齢の父親を心配し実家 に入り浸るマギーを心配して、 シャーロットと結婚します。そしてアメリーゴとシャーロットは義理の親子になるわ けですが、アダムとシャーロット の間に恋愛は感じません。アメリーゴとシャーロットの不倫だけでなく、4人の関係 を複雑にしてしまうのは、 母親を早くになくし、ずっと父娘2人で暮らし続けたアダムとマギーの依存関係です。 それは4人の結婚生活の破綻に もなりますが、アダムとマギー親子が何より恐れるのは、父の、娘の不幸です。お互 いの伴侶よりも、 自身のプライドよりも大切な。それはこの作品の中でもっともインパクトのある愛だ と思いました。
そしてアィヴォリー作品で幾度も描かれる、結ばれない恋人同士。お互いに思い合い ながらも、自分の生きる 社会や生活、立場を捨てきれず、自ら断ち切ってしまう愛。心から愛する事のできる 人と出会えた奇跡、 その人が自分を想ってくれる世界で1番の幸福。多分生涯の最後に思うのはお互いな のに・・・。 シャーロットとアメリーゴの愛に悲しみを感じます。
そして富豪のアダムがヨーロッパ各地を回り収集し、アメリカの故郷である炭坑の町 に美術館を建てようと 持ち帰る美術品、特にイタリアを代表する画家ラファエロの描いたマドンナ(聖母) と、没落故にイタリア貴族の アメリーゴと恋に落ちながら結ばれなかった女神のようなシャーロットが重なりまし た。どちらも美しい芸術作品、 けれど魂を持った存在でした。絵画の、写真の向こうで、微笑を浮かべる美しい2人 は、どこか悲しみが漂い、 どちらもイタリアを恋しいと思っているのかもしれません。