地獄の黙示録 特別完全版
2000(1979)年/アメリカ/3時間23分
監督・製作:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:ジョン・ミリアス,フランシス・フォード・コッポラ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:カーマイン・コッポラ,フランシス・フォード・コッポラ
美術:ディーン・タブラリス
編集:リチャード・マークス,ウォルター・マーチ
キャスト
カーツ大佐:マーロン・ブランド
キルゴア中佐:ロバート・デュヴァル
ウィラード大尉:マーティン・シーン
シェフ:フレデリック・フォレスト
チーフ:アルバート・ホール
ランス:サム・ボトムス
クリーン:ローレンス・フィッシュバーン
フォト・ジャーナリスト:デニス・ホッパー
将軍:G・D・スプラドリン
ルーカス大佐:ハリソン・フォード
STORY
サイゴンで待機していたウィラード大尉に出頭命
令が下る。基地を訪れた彼は、
カーツ大佐という人物が、軍の命令を無視し常軌を逸した行動をとっていることを知
る。彼の任務は、ナン川を上り、
ジャングルの奥に潜むカーツ大佐を見つけ、抹殺することだった。部下4人を引き連
れてナン川を溯っていく
ウィラード。その過程でウィラードが遭遇するさまざまな戦争、そして人生の狂気。
やがて彼はカーツと対峙し…。
予備知識なしに初めて観ました。
そして、ものすごい衝撃を受けました。
この映画を見て“きれいはきたない きたないはきれい”というシェイクスピアの
『マクベス』の
魔女の言葉を思い出しました。戦争も、戦争によって狂っている人間も世界も、とて
も醜く綺麗でした。
有名な「ワルキューレの騎行」をバックにした爆撃シーンも、戦場での爆弾の煙が赤
青黄と光の三原色の美しい色
だったことも、地獄へつづく川を思わす澱んだ川で出会う幻想的な風景も、とても耽
美的でした。
ナチズムを描いた作品では時に、残酷なまでの美を感じさせる作品に出会いますが、
密林のベトナム、
アメリカにとって挫折と反省というイメージ(あくまで私のイメージです)のベトナ
ム戦争を、
オペラのような華やかで壮大な芸術として描いているのに、びっくりしました。
オペラ『ニーベルングの指輪』の「ワルキューレの騎行」が使われていることもあり
ましたが、
この作品が『ニーベルング〜』の物語と重なりました。特にラストは「神々の黄昏」
のようでした。
けれど『ニーベルング〜』でも思いましたが、「神々の黄昏」よりも「ワルキューレ」
の方が魅力的でした。
神々の王とも言える、残酷でカリスマなカーツ大佐にあまり魅力を感じなかったのは、
『羊たちの沈黙』のレクター博士という魅力的な存在に先に出会ってしまったからか
もしれません。
けれどそれを差し引いても、この映画の美学に酔わされました。
“この映画”のベトナム戦争とは?
『マクベス』の魔女の“Fair is foul, and foul is fair”というセリフは“きれい
はきたない”という言葉以外に
別な訳もあります。“良いは悪い、悪いは良い”、或いはそうなのかもしれません。
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