あの頃ペニー・レインと

STORY
70年代のアメリカ。姉の影響で音楽好きになった ウィリアム が地元紙に書いた記事を「ローリング・ストーン」誌が注目、ウィリアムが15歳の少 年とは知らずに原稿を 依頼してきた。ブレイク寸前のバンド「スティルウォーター」の全米ツアーを同行取 材するウィリアムは、 ペニー・レインと名乗る少女との出会いや、バンドメンバーからの刺激を通して、少 しづつ大人になっていく。


素晴らしい作品でした。胸が爽やかな感動でいっぱいになりました。
主要な登場人物、主人公のウィリアム、ギタリストのラッセル、少女ペニー・レイン、 ウィリアムの母親まで総て魅力的で、映画を観終わって、別れるのが悲しくなりまし た。
そして何よりこの作品は“映画”として、とても完成されている作品だと思いました。 始まりから終わりまで、無駄な部分がなくて、自然にウィリアムの気持が理解できま した。
何故ロックに惹かれたのか?何故バンド「スティルウォーター」の中でラッセルに一 番魅力を感じたのか? 何故3人の女の子のうちペニー・レインに惹かれたのか? この映画は、ウィリアム から観た世界なのにも関わらず、 ウィリアムのモノローグはなく、ナレーションさえもありません。全く説明もなく、 ただウィリアムが観た映像、 ウィリアムが交わした会話のみで、バンドの中のラッセル、女の子達の中のペニー・ レインは、異彩を放ち始めて、 映画を観ている私まで、自然と目がいってしまいました。
そしてこの映画をより素敵にしたのは、ウィリアムの厳格な母親。15歳にして雑誌の 依頼を受けて、 スティルウォーターのツアーに同行するウィリアムを、心配しながらも送りだし「電 話は1日2回 (母親にかけること)、麻薬はダメ!」と、毎日電話して、描き方によっては滑稽に なってしまう母親を、 電話を持ちながら涙をこぼす風景等の映像で母親の気持も描いて、いつの間にかウィ リアムママが愛おしく 感じられてきました。こういった母親への子供の反抗心はとても描きやすいけれど、 ウィリアムもまた 母親を愛していて、そこがまた素敵でした。ママとラッセルとの会話も、とぼけてい て、でも真面目で、 可愛らしかったです。
取材をするウィリアムは最後まで真面目で、15歳にして記者ということはとてもすご いことなのに、 それを感じさせず、その真面目な性格のまま、自由奔放で個性的なスティルウォーター の中に、いつの間にか 溶け込んでしまう。ラツセルやペニーと同様に、いつの間にか自然に、ウィリアムに 愛情(愛着?)を感じてきて しまいました。
この映画の感想を書いているうちに「いつの間にか」という言葉がとても多いことに 気付きました。 “いつの間にか”とても好きになっている映画です。