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  クジラの島の少女

2003年/ニュージーランド
上映時間:1時間42
監督・脚本: ニキ・カーロ
製作総指揮: ビル・ギャヴィン
         リンダ・ゴールドスタイン・ノールトン
製作: ティム・サンダーズ
    ジョン・バーネット
    フランク・ヒューブナー
原作: ウィティ・イヒマエラ
撮影: レオン・ナービー
音楽: リサ・ジェラード
編集: ディヴィッド・コウルソン
衣裳: カースティ・キャメロン

キャスト
パイケア:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
コロ:ラウィリ・パラテーン
フラワーズ・:ヴィッキー・ホートン
ポロランギ:クリフ・カーティス
ラウィリ:グラント・ロア
ヘミ:マナ・タウマウヌ

STORY
ニュージーランドの小さな町でマオリ族の族長の家系に生まれた少女パイケア。
族長は代々男であるというしきたりゆえ期待されずに育ったパイケアだが、成長した彼女はやがて一族の役に立ちたいと願うようになる。




監督は、マオリ出身の女性監督ニキ・カーロの、マオリの伝承を基にした、少女の成長を描いた美しい映画です。

ニュージーランドの小さな浜辺の村が舞台です。
その村には、一千年前、遠くハワイキから新天地を求めて旅立った勇者パイケアが、クジラに助けられ、導かれて、この地にたどり着いたという伝説がありました。
そのパイケアを先祖に持つマオリ族は、代々、男を族長として築いてきました。

時は流れて、現代。
その末裔である族長コロの長男ポロランギに男女双子が授かりますが、出産時に母親と男児は命を落とし、女の子だけが残りました。
悲しみに打ちひしがれたポロランギでしたが、父コロは族長となる男の子を失ったことにのみこだわり、愛する妻を失った息子の悲しみを理解せず、孫娘を見ようともしませんでした。
そんな父に、反抗するかのように、ポロランギは娘に勇者パイケアの名を与え、娘を両親に預け、ヨーロッパへ旅立ってしまいました。

パイケアが成長するにつれて、コロは孫娘を愛しく思うようになります。
パイケアもおじいちゃんが大好き。学校の行き帰りは、いつもコロの自転車にちょこんと乗っていました。

パイケアが12歳になった時、世界的アーティストになたポロランギが戻ってきます。
コロは、息子が族長になりに戻ってきたと期待しますが、ポロランギはもう戻る気はなく、さらには恋人の白人女性に子どもができたというのです。
激しい口論の末、ポロランギはパイケアを連れて村を出ようとしますが、祖父母と村を愛するパイケアは途中で戻ってきてしまいます。

息子にもう期待できないと思ったコロは、村の男の子たちを集めて、部族の伝説、伝承歌、戦いの訓練を教え込もうとします。
せっかくの伝統の勉強も、名誉ある族長選びにも、少年達は、しぶしぶといった表情での参加でした。
一番の優等生はヘミでしたが、その家族は村でつまはじきにされるような、だらしのない一家でした。

男の子たちの練習に自分も参加しようとするパイケアでしたが、頑固な祖父は、女は入れないと追い出します。
パイケアは自分の存在を恨めしく思いはじめますが、祖母フラワーズのアドバイスで、叔父ラウィリから武術を教わります。
仕事もせず、ぶらぶらとして、とっくの昔父に見放されれたラウィリでしたが、パイケアに武術を教えるうち、伝統的武術ば楽しくなってきました。

少年たちの猛特訓が終わり、族長の最終試験が始まりました。
代々族長に伝わるクジラの歯の首飾りを海に投げ入れ、拾ったものが族長になれるのです。
ところが、少年達は、誰一人、見つけることはできませんでした。
マオリ族の終焉を感じ、落ち込み、寝込んでしまったコロ。
そんな祖父を元気付けようと、叔父ラウィリに船を出してもらい、パイケアが、首飾りを探しに海に潜ると、それは難なく見つかってしまいました。
ラウィリも祖母フラワーズも、もしかするとパイケアこそが真の族長ではと、思い始めまが、頑固なコロを思い、首飾りはすぐにはコロに渡りませんでした。

寝込んだコロの元に、学校の学芸会の招待状が届けられます。
その会のラストに、パイケアがスピーチコンテストで優勝したスピーチを披露するのです。
それは、パイケアが祖父に捧げた詩であり、パイケアが必死で覚えたマオリの歌も入っていました。
けれど、会場にコロの姿はなく、パイケアは涙ながらに、マオリ伝統のクジラを呼ぶ歌を歌いました。

パイケアの歌に呼応するかのように、クジラの群れが浜に打ち上げられました。
それを一族の終焉と考えたコロのもと、村中の人々が力をあわせて、クジラを海に返そうとします。
けれど大きなクジラは一向に動く気配を見せません。

村の人々がその日は諦め帰ろうとする時、パイケアは1人静かにクジラに近づいていくのでした──。


子どもの頃、楽しみだった「ハウス子ども名作劇場」の主人公のような、優しく強い心を持った女の子のお話です。
こういった美しい映画を観ると、ほっとします。
伝統が深く根付いた小さな村から、どんどん若者達が都会に出て行って、残るのは老人ばかり。
伝統がどんどん忘れられていくというのは、どこの国も共通のようです。

この映画の中で、伝統を象徴する縄は、途中でプツリと切れながら、パイケアが結び合わせると、再び使えるようになります。
祖父のコロは、それに気付きながら、認めないようにします。

コロが望んだような、伝統は確かにそのままの姿では残りませんが、救世主の名を受けついたパイケアを中心に、違った形で受け継がれていくのが、素敵でした。
伝統的な族長であるコロは、息子2人を気付かないうちに傷つけてしまいます。
長男のポロランギの芸術の才能を認めず、次男のラウィリは駄目な息子と、完全に諦めています。

もしパイケアの双子の兄弟が生きていたら、当然コロはその子に期待をかけていたことでしょうし、自分の持っている知識をその子にのみ、教え込もうとしたでしょう。
けれど、その子が父のように、マオリの伝統から離れたいと願ったら?
またその子にとりあえず族長が受け継がれても、村の若者達から、伝統は離れるいっぽうだったでしょう。

正当な跡継ぎがいなかったからこそ、村の少年達にコロはマオリの伝統を教えることができたし、それは決してむだなことではなかったように思います。
故郷を離れていった若者たちは、本当に故郷が嫌いになったわけでなく、たとえばポロランギの作り出すアートの中にはマオリが存在します。
パイケアは父の作り出した芸術を、誇りに思い、美しいと思いました。

パイケアは、女の子でなかったら、まさにコロが望んだままの族長でした。
コロの教え子の中で一番優秀なヘミを武術で負かしてしまい、マオリの伝統についてのスピーチで優勝する才能。
そして、パイケアが呼んだクジラ達は、老人から子どもたちまで、村中が力を合わせるきっかけともなります。
期待をかけられながら答えられなかったコロの息子達も、パイケアの存在で、もう一度故郷に、父の元へ戻ってくるきます。
物語の先は読みやすいのですが、心から感激しました。

映画館で、この作品を観た時、何度か泣きながら、観終わった後に、暖かいものが残りました。
男の子に負けないとするパイケアは、実はとてもお洒落です。
普段はスカートを履いていて、花柄のワンピースもかわいく着こなすのが、とても好感が持てました。