絵画:ターシャ・テューダー 「秘密の花園」(表紙)
MIDI:ショパン 夜想曲第19番
Tasha Tudor, The Secret Garden (cover)
MIDI : F.Chopin Nocturne No.19 Op.72 in E Minor.
MIDI提供:Chopin and Liszt MIDI Works様
このページに飾っている絵は、ターシャ・テューダーの描いたフランシス・ホジソン・バーネットの児童文学『秘密の花園』(1911)の表紙です。
『秘密の花園』の主人公で、10歳の少女メアリーは、英国の植民地であるインドで贅沢に、しかし両親からまったく構われなかったため、たいへんわがままな女の子になっていました。
ある時インドでコレラが流行り、メアリーはいっぺんに両親を失ってしまいます。
メアリーは英国に住む伯父クレイブンに引き取られます。
クレイブンの住む大邸宅は強風の吹きすさぶ荒れ野にありました。
メアリーは最初は暗い気持ちになりますが、メイドのマーサや庭師のベンさん、そして屋敷の庭に飛んでくるコマドリと仲良くなります。
この屋敷にはニつ秘密がありました。一つは高い塀に隠された開かずの花園、そして病弱で人前に出ないクレイブンの1人息子コリンでした。
メアリーは、コマドリのお陰で、秘密の花園の扉と鍵を見つけました。
この庭は10年前、クレイブンの妻でコリンの母である女性の庭で、彼女がブランコから落ちて亡くなった場所でもありました。妻の死の悲しみにクレイブンは、この庭を閉ざしてしまったのです。
メアリーは、メイドのマーサの弟で動物好きの少年ディコンと協力して、庭を蘇らせようとします。そしてそのメンバーには、病弱なコリンも加わりました。
わがままなだったメアリーも、メアリー以上にわがままに輪をかけたコリンも、庭で子どもらしさを取り戻していくのでした。
この『秘密の花園』は何度か映画化もされていますが、掘り出し物がTV版(1987)です。ディコン役は、映画『ネバーエンディング・ストーリー』の主人公バスチアン役、バレット・オリバーが演じていました。
このテレビ版には、ラストに、原作にない成長したメアリーとコリンが登場します。
その成長したコリンを演じたのが、映画『英国王のスピーチ』(2010)の国王ジョージ6世役で第83回アカデミー賞を受賞したコリン・ファースでした(役と同名!)。
またTV版『秘密の花園』のテーマ曲が、このページに流れているショパンのノクターン第19番です。 |
Colin Firth as Colin Craven in 'The Secret Garden' (1987)
完全にネタバレ、TV版『秘密の花園』のラストシーンです。YouTubeにも動画があります。
第一次世界大戦の終わり。庭に戻ってきた成長したメアリー。けれどそこにかつての少年達、ディコンとコリンはいない。
伯父のクレイブンもまた亡くなっていた。
「いつか子どもたちが戻ってくるから、庭を守っていてほしい」と、庭師のベンさんに言い残して。
ベンさんとメアリーは語り合い、ディコンが森で戦死したと話す。
「森でなんてディコンらしいわ」と、悲しそうに、懐かしそうに言うメアリー。
「わたしはずっとこの庭を夢みてきたの。でも夢よりずっとここは素晴らしいわ」
そう言った時、入り口で懐かしい声がした。
「薔薇が咲く所に雑草は生えない」
それはベンさんが、かつて子どもたちに教えた言葉だった。メアリーの顔が輝く。
「コリン!」
負傷し、少し足を引き摺りながらも、軍服姿の凛々しいコリンが立っていた。弱々しい少年だった彼は今は、すっかり背も伸び、知的な顔立ちの美しい青年に成長していた。
駆け寄るメアリーを抱きとめると、コリンは言った。
「大学の時、君に結婚を申し込んだ。戦地からも手紙で。どうして返事をくれなかったの?」
穏やかにメアリーは微笑んだ。
「ここで申し込んでほしかったの」
コリンもまた、優しく微笑んだ。
「そうだよね。ぼくと結婚してくれる?メアリー・レノックス?」
「喜んで」
キスをする2人を暖かく、花盛りの庭が見守っていた。 |
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