絵画:ウォルター・クレイン 「プローセルピナ」 『シェイクスピアの花園』より
MIDI:ビゼー 『アルルの女』より ファランドール
Walter Crane, Proserpina from "Flowers from Shakespeare's Garden",
1906.
MIDI : Georges Bizet, Farandole from "L'Arlesienne Suites".
PERDITA O Proserpina, For the flowers now, that frighted thou let'st fall From
Dis's waggon!
(Winter's tale, Act 4. Scene 4. by William Shakespeare)
パーディタ
ああ、プロセルピナ、 あなたが驚いて、黄泉の国の王ディスの車から落とした あのとりどりの花がほしい!
(ウィリアム・シェイクスピア 『冬物語』 第4幕第4場) |
シェイクスピアの『冬物語』より、「パーディタの花づくし」として知られるセリフです。
このセリフの中では水仙、スミレ、プリムローズなど、色とりどりの花が歌われます。
このセリフの中に登場するプロセルピナ(プロサーピナ)とディスとは、ギリシャ神話のペルセポネと冥王ハデスの英語名です。
豊穣の女神デメテルの娘ペルセポネ(ペルセフォネ)は、シシリアで花を摘んでいました。スミレや白百合、そして彼女が黄金色の水仙に手を伸ばした時、突然大地が大きく割れ、その亀裂から黒い三頭の馬に牽かせた、輝く二輪車が現れました。馬車に乗った男は王冠を被っています。冥王ハデスでした。彼はペルセポネを見初め、花嫁にしようと現れたのです。ハデスは彼女を抱きかけると、有無を言わせず、そのまま車に乗せ連れ去ってしまいました。
連れ去られる時に、彼女は手にしていた色とりどりの花を落としていきました。
娘を失ったデメテルは、嘆きと怒りのあまり大地の世話を怠りました。大地は荒れ果て、飢饉が起こりました。
困り果てた全能の神ゼウスは、伝令神ヘルメスを黄泉の国へと使いに出し、ハデスにペルセポネを帰すように言いました。
黄泉の国でペルセポネは王の花嫁として大切に扱われていましたが、母恋しさで、何も口にしていませんでした。
そんな時、ヘルメスが現れ、ハデスもペルセポネを帰すことをしぶしぶ承諾しました。
帰りの馬車に乗り込むペルセポネにハデスは柘榴(ザクロ)をひとつ与えました。ペルセポネは地上までの馬車の中でその柘榴の種を4つぶ(6つぶという説も)食べてしまいました。
ところがこの石榴こそ、結婚の印で、黄泉の国の食物を口にした彼女は、黄泉の国で暮らさなくてはならなくなったのです。
こうなると全能の神ゼウスでさえも、デメテルに娘を完全に返すこてとできなくなりましたが、デメテルは必死になり、ゼウスに懇願し、ゼウスは妥協案を出しました。
4つぶの石榴を食べたペルセポネは、1年の3分の1(4ヶ月)を黄泉の国でハデスの妻として過ごし、残りの8ヶ月の間はデメテルと地上で暮らせるようになったのです。
愛する娘のいない4ヶ月、豊饒の女神デメテルは悲しみで、大地の世話をやめ、穀物は育ちませんでした。それが冬です。そして娘が戻ってくると、野原は花が咲きみだれ、木々は実をつけました。それが春なのです。
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フレデリック・レイトン 「プロセルピナの返還」(1891)
Frederick Leighton, Return of Persephone,1891.
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