絵画:ウォルター・クレイン 「コックル(ナデシコ)」 『恋の骨折り損』より
MIDI:バッハ 無伴奏パルティータ第3番より ガボット

Walter Crane, Cockle from "Love's Labour's Lost".
MIDI : J.S.Bach, Gavotte from "Partita for Unaccompanied Violin III".



BIRON
Allons! allons! Sow'd cockle reap'd no corn;
And justice always whirls in equal measure:
Light wenches may prove plagues to men forsworn;
If so, our copper buys no better treasure.

          (Love's Labour's Lost, Act 4. Scene 3. by William Shakespeare)

ビローン
いざや進まん!ナデシコをまいても小麦は穫れぬもの、
因果はめぐり結局は正しい裁きをつけるもの。
誓約破りの男には尻軽娘がお似合いだ、
しょせん卑しい銅貨でりっぱな宝は買えぬのだ。
    (ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳  『恋の骨折り損』 第4幕第3場)


 『恋の骨折り損』(初演 1594)は、4つの恋をめぐる喜劇です。
 ナヴァール国王ファーディナンドは、禁欲的な生活をするという誓いを、3人の廷臣たち、ビローン、ロンガヴィル、デュメーンと共にたてていました。
 ところが国王はフランスとの外交で、やむなくフランス王女と会うことになります。フランス王女は3人の侍女を連れてきました。なんということでしょうか。国王と3人の廷臣たちは、その場で王女と3人の侍女たちに、それぞれ恋してしまったのです。

 上記のビローンのセリフ“Sow'd cockle reap'd no corn”には、“Cockle”という名の植物が出てきます。“cockle”といえば、マザー・グースの『つむじ曲がりのメアリーさん』という歌に、“With silver bells and cockle shells”という言葉が出てきて、“cockle shells”とは「トリガイ」という貝のことでした。
 辞書で調べても、どうしてもこの植物の和名が分からず、小田島雄志訳の『恋の骨折り損』を読み返したところ、“cockle”は「ナデシコ」と訳されていました。
 “cockle”と「ナデシコ」で調べたところ、日本では“corn cockle”という名の植物が、ムギナデシコ(麦撫子)または、ムギセンノウ(麦仙翁)として紹介されていて、そのムギナデシコとウォルター・クレインの絵の“cockle”が似ているように思いました。


作者不詳 『恋の骨折り損』より 「フランス王女」
anony, Princess of France from "Love's Labour's Lost", c.1860.




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