絵画:ウォルター・クレイン 「ローズマリー」 『ハムレット』より
MIDI:リヒナー 「忘れな草」
Walter Crane, Rosemary from "Hamlet".
MIDI : H.Lichner, Forget-Me-Not.
OPHELIA
There's rosemary, that's for remembrance;
Pray you, love, remember.
(Hamlet, Act 4. Scene 5. by William Shakespeare)
オフィーリア
これがローズマリー、ものを忘れないようにするお花よ。
ねえ、愛しい方。お忘れにならないでね。
(ウィリアム・シェイクスピア 『ハムレット』 第4幕第5場) |
William Gorman Wills
Ophelia and Laertes 'Ophelia Here is Rosemary'
『ハムレット』(初演 1600 初版1604)は、シェイクスピアの作品の中でもっとも有名な作品です。
王子ハムレットは先ごろ急死した、デンマーク王ハムレットと王妃ガートルードの息子でした。母ガートルードは夫の死後まもなくその弟で新王となったクローディアスと再婚し、二重のショックを受けたハムレットは、陰鬱な気持ちに悩まされ続けていました。
ある夜、ハムレットの元に亡き父の亡霊が現れ、現王クローディアスに毒殺されたのだと語り、父の復讐を遂げるように王子に命じました。
ハムレットは幽霊の言葉が真実か探るために、狂ったふりをして、恋人のオフィーリアにも冷たくあたりました。何もしらないオフィーリアは、悲しくて仕方がありませんでした。
そんな時、旅芸人の一座が現れ、ハムレットはその一座に、父の亡霊から聞いた殺害の場面を王の前で演じさせました。一座の芝居を見ていたクローディアス王は、殺害の場面で、血相を変え、その場を飛び出してしまいました。
ハムレットは叔父の罪を確信し、そんな男と再婚した母を問い詰めていると、壁掛けの奥で物音がしたので、王と勘違いして、内大臣ポローニアスを刺し殺してしまいました。
ポローニアスはオフィーリアの父でした。
オフィーリアは愛する父を、愛するハムレットに殺されたことに耐え切れず、ついに発狂してしまいました。
第4幕第5場、宮廷の広間では、オフィーリアの兄のレアティーズが、王と王妃を問いただしていました。フランスに行っていた彼は、父の死の知らせに急遽帰国したのです。
そこに髪を振り乱し、目もうつろな、痛ましい姿のオフィーリアが、手に花をもって現れました。
彼女は王も王妃も、兄さえも見分けられませんでした。わけの分からない歌を歌った後で、兄を恋人のハムレットと間違えたのか、ローズマリーの枝そを差し出して言うのです。
「これがローズマリー、ものを忘れないようにするお花よ。
ねえ、愛しい方。お忘れにならないでね」
父を殺され、正気を失ったオフィーリアはなおもその恋心を、この花に託しています。ローズマリーの和名はマンネンロウ(迷迭香)、ローズマリーの花言葉は「記憶」「思い出」そして「忘れずに」。また香りの高いローズマリーは、心の病気を直すと信じられてきました。
オフィーリアがローズマリーによって呼び戻した記憶は、やはり恋心だったのでしょうか。
ハムレットはオフィーリアを忘れていませんでした。変わらず愛していて、けれどそれが明らかになるのは彼女の死後でした。
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作者不詳 『ハムレット』より 「オフィーリア」
anony, Ophelia from "Hamlet", c.1860.
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