絵画:ウォルター・クレイン 「デージー(ヒナギク)」 『ハムレット』より
MIDI:マスネ 「エレジー(悲歌)」

Walter Crane, Daisy from "Hamlet".
MIDI : J.E.F.Massenet, Elegie.


OPHELIA
There's fennel for you, and columbines: there's rue
for you; and here's some for me: we may call it
herb-grace o' Sundays: O you must wear your rue with
a difference. There's a daisy:
          (Hamlet, Act 4. Scene 5. by William Shakespeare)

オフィーリア
王様には、フェンネルとオダマキを。
王妃様にはヘンルーダを。わたしにも少しとっておきましょう。
これは安息日の恵み草と言ってもいいの。
ああ、あなたのヘンルーダは、
わたしとは違ったふうにおつけにならなくては…。
デージーもあるわ。
             (ウィリアム・シェイクスピア 『ハムレット』 第4幕第5場)


柳の枝、キンポウゲ、イラクサ、デージー、紫蘭
Willow, Crow Flowers, Daisies and Long Purples.
(Hamlet, Act 4. Scene 7.)
Flowers of Shakespeare, 1846.


 『ハムレット』第4幕第5場、宮廷に花を持って現れた狂えるオフィーリアは、兄のレアティーズにローズマリーとパンジー、王にはフェンネルとオダマキ、そして王妃にはヘンルーダを与えると、今度はデージー(ヒナギク)を取り出します。

"There's a daisy."

 私の持っている『ハムレット』では、以下のように訳されています。訳者の方のこの花への解釈がおもしろいです。

「これは悲しい恋のヒナギク」
                            (松岡和子 訳)

「これはひな菊、いつわりの花」
                            (永川玲ニ 訳)


 デージーは、ハムレットの第4幕第7場で再び登場します。
 王妃ガートルードが語る、オフィーリアの水死のの場面として。

QUEEN
Therewith fantastic garlands did she make
Of crow-flowers, nettles, daisies, and long purples.
                              (Hamlet, Act 4, Scene 7)


王妃
オフィーリアはその柳の枝にキンポウゲ、イラクサ、デージー、
紫のランを添えた風変わりな花冠を作りました。
                              (『ハムレット』 第4幕第7場)

 オフィーリアは小川のほとりにはえた柳の枝に、作った花冠をかけようとして、その枝にのぼったところ、その枝が折れ、川に落ちて、溺れ死んでしまったのです。
 溺れる彼女の顔には不幸せなど微塵もなく、賛美歌を歌いながら、人魚のようにたゆたい、そして水にのまれていったそうです。


アーサー・ラッカム挿絵 『ハムレット』
Arthur Rackham, "Hamlet".
To this brook Ophelia came.




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