絵画:ヘンリエッタ・ウィルビーク・ル・メール
『マザー・グース』より 「わたしのちいさな このみのなるき

MIDI:ヘンデル 「水上の音楽」

Henriette Willebeek Le Mair, "I Had a Little Nut Tree" from 'Nursery Rhymes'.

MIDI : G.F.Haendel, Wasser Musik.



I had a little nut tree,
Nothing would it bear
But a silver nutmeg,
And a golden pear;
The King of Spain's daughter
Came to visit me,
And all for the sake
Of my little nut tree.


わたしのちいさな このみのなるき
きんのにくずく ぎんのなし
ほかにはなんにも ならないが
すぺいんおうの むすめさん
わざわざたずねて やってきた
それというのも ほかでもない
わたしのちいさな きのためさ
                      (谷川俊太郎 訳)

MIDI : I Had a Little Nut Tree


 この歌の「スペイン王の娘さん」とは、イギリスの王ヘンリー8世(在位1509-1547)に嫁いだスペイン王女キャサリンという説があります。
 ヘンリー8世はその生涯に、6人の妻を持ちました。
 ヘンリーは最初の妻であるキャサリンと離婚し、恋人アン・ブーリンと結婚を望みますが、ローマ法王に認められなかったため、離婚を認めない旧教(カトリック)を廃止し、自ら新教(プロテスタント)のイングランド国教会の首長となり、キャサリンとの結婚を解消しました。
 けれど当時のイギリス国民には熱心なカトリック教徒が多く、キャサリンはそんな国民に支持されました。
 そんなキャサリンへの同情から、「わたしのちいさな このみのなるき」という歌が、生まれたのかもしれません。
 そして新たな王妃となったアン・ブーリンが生んだ王女こそ、イギリスの繁栄を築くことになるエリザベス1世(在位1558-1603)でした。




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