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さいたま市民の森

交 通●JR東北線大宮の一つ先の土呂駅のすぐ近く



さいたま市民の森は、名前の通り市民の憩いの場であり、休日になると幼い子供をつ れた家族でいっぱいになります。
リスが放し飼いになっているリス園、ドングリなどの森の木の実で出来た道、 その道を裸足で通ると足の裏のツボを刺激し、健康に良いそうですが、痛くて涙がで ます。
熱帯植物を集めた温室もあります。
  そして映画「ローマの休日」に出てくるスペイン広場のような階段があり、降りると 芝生が広がり、 父と息子がキャッチボールをしていたり、家族でお弁当を食べたり、小さな子供がは しゃぎまわってします。
ニュースで伝えられる児童虐など悲惨な事件がここでは遠い出来事のように思えます。
そして芝生の向こうにはバラ園を中心とした花壇があります。
バラの正確な数は分かりませんが、200株ほどあると思います。
余計な建物がなく、太陽をいっぱいに浴びたバラの回りをラベンダーの生け垣が囲み、 ラベンダーは花の咲いていない説きでも葉に触れると、いい香りがします。
私が訪れた秋には、様々なな種類の美しいバラの後ろに、ピンク色のコスモス畑が広 がっていました。
そしてこの芝生の広場や庭園を取り囲むように、ケヤキやポプラ様々な大きな木の、 森が広がっています。

私が、この「市民の森」で特筆したいと思ったのは、美しいバラ園でもなく、かわい らしいリス園でもなく、 特別に植樹されたらしい、まだ大きく成長していない3本の「クスの木」でした。

1999年から2000年にかけてベストセラーになった長編小説があります。天童荒太著、 「永遠の仔」(幻冬舎)です。
この作品は大きな反響と感動を呼び、ブックマガジン「ダ・ヴィンチ」の読者投票に よる1999年年間ベスト10、 宝島社の「このミステリーがすごい!」などの様々な本の投票で、見事1位を独占し ました。
ミステリーとも、ラブストーリーとも、人間ドラマとしてもとらえることができます が、 根底に流れる大きなテーマは「児童虐待」です。
四国山中の児童精神科のある病院に、17年前1人の少女がやってきます。
少女は先に入院していた2人の少年と知り合います。
3人とも親に受けた虐待がもとで、精神を病んでいるのですが、その虐待自体をお互 いに打ち明けるまでに親しくなり、 お互いが支えとなっていきます。
そんな時に3人の退院が近付き、少女については退院後も虐待が行われ続けるだろう ことを知って、 3人はある人物の殺害を計画します。
そしてある人物は3人によって殺害されたのか、それとも事故なのか死んでしまいま す。
そして17年後に3人は再会し、それかきっかけとなったように、幼児を虐待した母親 殺しや、 新たな家庭の悲劇が起きていきます。
過去と現在が交互に描かれ?子供時代に守ってもらえるはずの親に虐待され、心に深 い傷を負い、 しかも自分が悪かったせいだと17年たっても心の底で思い続け、それでも親を憎みき れずに求めてまう、 傷が治りきらないまま大人になった子供の強い叫びが描かれていました。
子供時代のクライマックスが、病院のある四国の森、病院を抜け出した少女が救いを 求めるように 森の中の大きなクスの木に身を隠します。心配して探しに来た少年達。その時3人は ずっと医者にも言えなかった 虐待と悲しみを、お互いに、クスの木に打ち明けるのです。
大人になりきっていない市民の森の3本の「クスの木」は寄り添うよにして立ってい ます。
「永遠の仔」の子供達のように。同時にこの木は「森」を訪れる幸せな家族を見てい ます。
「永遠の仔」の少年達は17年経っても、クスの木とお互いに言い合った言葉「生きて いていいんだよ」 という言葉を支えに生きていきます。

市民の森の3本のクスの木は、風が吹くたび「生きていていいんだよ」と、優しく囁 きあっているようでした。