ベラスケス 「王子フェリペ・プロスペロ」(1659)
Diego Velázquez (1599-1660) Prince Felipe Prospero, 1659.


フェリペ・プロスペロ王子は、1657年11月に生まれました。マルガリータ王女が6歳の時でした。
それはスペイン王室待望の王位継承者の誕生で、期待を背負った王子は父フェリペ4世の名を受け継ぎました。

この作品はベラスケスの最晩年の作品で、1659年にウィーンに送られていることから、王子が2歳の頃の作品だと思われます。
少女のような格好をした王子はとても儚げで、椅子に座った子犬と共に、いたいけな印象がします。
王子のスカートについている鈴はお守りです。か弱くて小さい、大切な王子を守ってくれるよう、祈りが込められています。

この絵画は、やはりベラスケスが描いた、フェリペ・プロスペロ王子の兄ドン・カルロス王子の幼年時代の作品「矮人を連れた皇太子バルタサール・カルロス」などの、幼いながら堂々とした姿と対照的です。
このフェリペ・プロスペロ王子は、かわいそうなことにわずか4歳でてんかんの発作を起こして亡くなってしまうのです。
1960年に亡くなってしまうベラスケスは、王子の死を知りません。
けれどこの絵にはどこか死の影が漂っているのは、ベラスケスの鋭い観察力と描写力からでしょう。