エトワール

2000年/フランス/100分
監督・撮影:ニルス・タヴェルニエ
撮影:ドミニク=ル・リゴレー

キャスト
ローラン・イレール
マニュエル・ルグリ
ニコラ・ル・リッシュ
オレリー・デュポン
   他パリ・オペラ座バレエ団

STORY
1999年4月の日本公演後、本拠地ガルニエ宮に戻っ たパリ・オペラ座 バレエ団。厳しい階級社会のなか、最高位のエトワールを目指すダンサーたち。カメ ラは、世俗から隔絶された 世界に身を置く彼らの素顔を追う。



バレエファンへの、最高の贈り物のような作品だと思いました。
ドキュメンタリー・タッチの作品で、特に筋などなく、詳しい説明もないので、観た 方全員が楽しめる作品とは言い がたいのですが、バレエ以外にも、何か舞踊関係に興味がある方も楽しめる作品だと 思います。 何しろ現在世界最高峰のダンサーの踊りを、間近で大画面で見ることができるのです から。

かつて宮殿でもあったパリ・オペラ座ガルニエのレッスン風景は、まるでドガの絵画 から抜け出てきたようで、 しかもそこで練習をしているのは、マニュエル・ルグリやニコラ・ル・リッシュなど、 手の届かないような憧れの ダンサー達。そしてモーリス・ベジャールやイリ・キリアンという世界最高の振付家 が、振付けを指導する場面と インタビューもあり、ただただ感激しました。

日本で公演されたベジャール振付の『第九交響曲』、練習風景と本番の踊りが交互に 映され、その『第九』の練習の 裏側で、次の公演の『白鳥の湖』の王子の花嫁候補の代役という、主役でもなく舞台 にも出られる可能性の低い ダンサーの、必死に練習する風景が対称的に描かれていて、どちらの風景にも感動し ました。

エリザベート・プラテルの引退公演には、涙が出そうになりました。ニコラ・ル・リッ シュとマニュエル・ルグリに 手を取られてのシルフィード。ニコラがエトワールになった時、ちょうどニーナ・ア ナニアシヴィリのガラ公演で 日本に来ていて、その時のパートナーがプラテルだったと思い出しました。その時の ことを2人は思い出したで しょうか。

ミテキ・クドーと雑談するルグリ、子供の写真を飾っているローラン・イレール、憧 れの王子様達の素顔を見ることが できたことも、嬉しかったです。

映画『愛と喝采の日々』で描かれた女性ダンサーの悩み、ダンサーとして生きるか、 子供を生むために踊ることを 諦めるのか、それとも負担はあってもどちらも両方を生きてみるのか。現実にそれを 選択しなければならないダンサー のターニング・ポイント(『愛と喝采の日々』の原題)に、考えさせられました。
物語ではないので結末はない、生きているダンサー達。映画のタイトルの『エトワー ル』は、オペラ座の主役を踊る 最高位のダンサーのことを差しますが、一等星の輝きをはなたなくとも、それぞれが 星(エトワール)のような気がし ました。