フィオナの海

1994年/アメリカ/1時間43分
監督・脚本・編集:ジョン・セイルズ
撮影:ハスケル・ウェクスラー
音楽:メイソン・ダーリング
原作:ロザリー・K・フライ

キャスト
フィオナ:ジェニ・コートニ
テス(祖母):アイリーン・コルガン
ヒュー(祖父):リチャード・シェリダン
タッド:ジョン・リンチ
ジェミー:シリアン・バーン
シルキー(妖精):スーザン・リンチ

STORY
アイルランド西北部のわびしい島を舞台に、ケル トの古伝説を巧みに 取り込んで描かれた珠玉のメルヘン。十歳の少女フィオナが、伝説の妖精(ようせい) セルキーを思わせるアザラシたち の住む島で、幼いころ不思議な事件で姿を消した弟ジェミーと再会するまでの物語で ある。母のいないフィオナは 父や兄弟と別れ、祖父母と暮らすために、生まれ育ったローン・イニッシュ島のある 群島を訪れる。そこで自分の一族 と弟をめぐる伝説を知らされる。そんなある日、弟を目撃する。


ちょうど「指輪物語」を読んでいた時、ふとこの作品を思い出してました。
だいぶ前に観たので、なんだか本の間から、過去に摘んだ花の押し花が出てきたよう な気持になりました。
「フィオナの海」はそんな懐かしく美しい作品です。

アイルランドが舞台の、ケルトの妖精伝説をモチーフにした幻想的な物語で、少女フィ オナ(年は10歳くらい)の 目を通じて描かれています。

小さな島ローン・イニッシュから最後の住民達が去る日、その中には幼かった頃のフィ オナの家族もいて、出発間際になって突然、 フィオナの弟で赤ん坊のジェミーの乗った揺りかごが、不思議な力で引き寄せられる ように、海に流され行方不明に なってしまいます。
その後都会で暮らしていたフィオナが、ローン・イニッシュ島には船で行ける距離の 本土に住む祖父母の元を訪れます。
祖父から島のアザラシの妖精(セルキー)の伝説を聞き、弟は妖精に守られで生きて いると思います。
そして従兄のイーモンによると、フィオナの先祖にはセルキーがいるようなのです。
子孫(金髪の一族)の中には妖精の血を濃く受け継いだ黒髪の者が時々生まれ、ジェ ミーもその1人だというのです。

フィオナはローン・イニッシュを訪れます。
そしてフィオナはそこに花を摘む黒髪の小さな男の子を見るのです。
けれどフィオナが「ジェミー!」と呼びかけると、男の子は海に逃げていき揺りかご に乗って行ってしまいます。
フィオナは自分達家族が島に戻れば、きっとジェミーも戻ってくると思い、半信半疑 のイーモンに手伝わせて、 かつての家を元通りにします。

とてもきれいな物語で、暖かな余韻が残ります。
金髪の一族の中で、たまに生まれる黒髪の子供。それは先祖の1人のセルキーである 女性の血なのか。
妖精と一口に言っても、フェアリーとエルフは違うのだそうです。
長い金髪に澄んだ瞳のフィオナの方が、日本人の私から見れば妖精のように見えます が、そのイメージはどちらかと いえばエルフに近く、フェアリーの中にはドワーフ近い者もいるそうです。

フィオナが祖父母の元を訪れる船から、そして無人島を訪れる小舟を、アザラシが時 には一匹、あるいは群れに なって、フィオナをじっと見つめます。それは怖いような、懐かしいような気持にな ります。
アイルランドは今でも妖精伝説と共に暮らす国。“妖精が通ります。注意”などとい う看板があるくらい。 フィオナの先祖のセルキーである女性の物語は、日本の羽衣伝説と似ています。神様 がかつてとても身近にいた 日本と、妖精の国アイルランドは共通する所が多いような気がします。分断されてい るとはいえ、島国という点も。
「フィオナ〜」はどこか「千と千尋の神隠し」とも似ています。10歳の少女が主人公、 かつて身近であった妖精と 神々、自然への回帰、そして少女が家族の絆を大切にすることも。
美しく、どこか懐かしい、優しい作品でした。