リトル・ダンサー

2000年/イギリス/1時間51分
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:リー・ホール
振付:ピーター・ダーリング
撮影監督:ブライアン・トゥファーノ
音楽:スティーヴン・ウォーベック
美術:マリア・ジュルコヴィック

キャスト
ビリー:ジェイミー・ベル
ウィルキンソン先生:ジュリー・ウォルターズ
父:ゲアリー・ルイス
成長したビリー:アダム・クーパー


STORY
1984年、ストライキに揺れるイングランド北部の 炭鉱町。 ママを亡くし、パパも兄も炭鉱労働者のビリーはボクシング教室に通っているが、試 合に負けてばかり。 そんな時、偶然目にしたウィルキンソン婦人のバレエ教室に強く惹かれ、女の子た ちに混じって練習するうちに 夢中になる。 ウィルキンソン先生はどんどん上達するビリーに自分が果たせなかっ た夢を重ね合わせて、 熱心に彼を教える。 しかし、家族の大事なお金をバレエに使っていたことを知った パパは激怒。ビリーは悔しさを ぶつけるように一人で踊るしかなかった。 だが、ストライキが長びき町中が暗く沈 んでいるクリスマスの夜、 親友マイケルの前で踊るビリーの姿を見て、息子の素晴らしい才能に始めて気づい たパパはロンドンの名門、 ロイヤル・バレエ学校に入学させるため、ある決意をする。



バレエが大好きです。だからバレエを扱った映画は大好きなのですが、この作品は本 当に良かったです。
バレエシーンも良かったのですが、ダンサー志望の主人公への周囲の愛が良かったで す。
ドガの絵画から抜け出たような、クラシック・チュチュを身につけて、バレエのレッ スンをする少女達。 そこに場違いな、ボクシングの格好をした少年が入ってくる違和感。この映像だけで、 とても惹き付けられました。
アンデルセン童話の「みにくいあひるの子」のように、見た目には白鳥の群れに紛れ 込んだ、あひるの子。
男の子がバレエをするのは、かつて国から援助を受けたソ連でもなければ、やはり恥 ずかしいようですね。 この映画の主人公ビリーのパパも、話も聞かずに猛反対。でも本当にビリーがバレエ をやりたいことを知って、 少しずつ、不器用に変化して。

童話の「みにくいあひるの子」を、やはり思い出します。兄弟にさえ嫌われたみにく いあひるの子は、 最後には白鳥になりますが、このラストにふと考えてしまいます。みにくいあひるの 子は、本当は白鳥の子で卵の 時にあひるの巣に紛れ込んだのか、それともみにくいあひるの子はやはりあひるの子 で奇跡が起こって白鳥になった のか。
ビリーは間違いなく空を飛べないあひるの子供だったと思います。「ニルスの不思議 な旅」という児童文学には、 やはり飛べない家禽のガチョウが空を飛んで渡り鳥と旅をしたけれど、ビリーもあひ るだったけれど、飛べたのだと 思います
。 そして童話の「みにくいあひるの子」との違いは、ビリーが家族から愛されていたこ と。自分達と姿が違っていても、 飛んでも、パパもお兄ちゃんも、痴呆気味のおばあちゃんも、ビリーが大好きで応援 してくれたこと。自分の娘では なくビリーに才能を認めてくれたバレエの先生、女装癖のあるビリーの親友マイケル と共に、この映画が大好きなの は、周囲の暖かい眼差しがあったからでした。