王は踊る


STORY
わずか20年数年前に解読された17世紀バロッ クダンスの舞踏譜。 そこには才気溢れるダンサー、そして「太陽王」の名をほしいままにしたフランス国 王ルイ14世の姿があった。 ルイはわずか5歳で国王となったが、政治の実権は母と愛人が握っていた。 幼い時から音楽とダンスの才能に恵まれていた彼にできることは、ダンスを通して人々 の崇拝を獲得することであった。 そんな彼のそばには常に1人の男がいた 。国王ルイ14世をまさに太陽のごとく輝 かせるために 3000曲余りを作曲し、バロックダンスの隆盛を支えた音楽家にして舞踊家、リュ リである。 彼の情熱の源は、国王である一人の男、ルイに対する熱く狂おしい愛にほかならなかっ た。



バレエが大好きなので、期待して観ました。
バレエを描いた作品としても、人間を描いた作品としても、宮廷文化、芸術について 描いた作品としても、 私はとても良かったと思いました。
国王ルイ14世と音楽家で舞踊家のリュリ、劇作家モリエールも含めて3人ともひじょ うにエゴイストです。 そのエゴイスティックな部分を、醜いけれど美しく、滑稽だけれど華麗に描いていた と思いました。
自分が作る城を夢見ながら沼に落ち、肺炎で死の床につくルイ。ルイに主従を超えた 愛を抱き、 出産で苦しむ妻を振り返ることなく死の床のルイの元に駆けつけ、一晩中ルイの好き な音楽を演奏し続けるリュリ。 古い体質の教会を、容赦なく風刺した劇を書くモリエール。思いやりのない彼等。で も彼等が残した、 後世で更に洗練されたバレエの世界は、刹那的なものではあっても、あまりにも美し く、惹き付けられます。
同じ芸術でも、イタリアとドイツはオペラ、フランスとロシアはバレエのイメージで した。 でもバレエが生まれたのはイタリアで、ルネッサンスの時代だそうです。 イタリアのメディチ家とフランス王家の婚姻により伝わったバレエが花開いたのが、 この映画のルイ14世の時。ルイが踊るバレエの音楽が、イタリア人のリュリの作曲し た音楽というのも、 この流れでしょうか。
伝説のルイ14世時代のバレエを、この映画で初めて観ました。なんて綺麗なのだろう と思いました。 王の権力を周囲に見せつけるためのものだとしても、太陽をイメージしたきらびやか な衣装と仮面、華麗なステップ。 リュリが国王に王としての資質ではなく、彼自身に恋してしまったことが分かるよう な気がしました。 最後まで“踊る王”に恋し続けていたことも。
バレエは女性が踊るイメージがあり、映画「リトル・ダンサー」でもバレエを踊る少 年は周囲に理解されず悩みますが、 私が魅せられるバレエダンサーの多くは男性です。映画なら「愛と哀しみのボレロ」 のジョルジュ・ドン、 「愛と喝采の日々」「ホワイトナイツ」のミハイル・バリシニコフ。この映画の国王 ルイもまた、 忘れられない“ダンサー”になりました。