Georges Jules Victor Clairin
Ophelia



ジョルジュ・ジュール・ヴィクトール・クレラン 「オフィーリア」 1898年
Georges Jules Victor Clairin, Ophelia, 1898.


QUEEN
There is a willow grows aslant a brook,
That shows his hoar leaves in the glassy stream;
There with fantastic garlands did she come
Of crow-flowers, nettles, daisies, and long purples
That liberal shepherds give a grosser name,
But our cold maids do dead men's fingers call them:
There, on the pendent boughs her coronet weeds
Clambering to hang, an envious sliver broke;
When down her weedy trophies and herself
Fell in the weeping brook. Her clothes spread wide;
And, mermaid-like, awhile they bore her up:
Which time she chanted snatches of old tunes;
As one incapable of her own distress,
Or like a creature native and indued
Unto that element: but long it could not be
Till that her garments, heavy with their drink,
Pull'd the poor wretch from her melodious lay
To muddy death.

William Shakespeare, HAMLET
Act 4, Scene 7


王妃
小川の上に斜めにかかって、鏡のような水面に
白い葉裏を映している柳の木がありますわね、
その小枝であの子は不思議な冠をあんでいたの、
きんぽうげやいら草やひな菊や、それに紫蘭もそえて──
あの花を口ぎたない羊飼いたちはみだらな名で呼んでおりますが
清らかな乙女たちは死人の指と言っておりますわ。
それから柳によじのぼって、垂れさがった枝に
その花冠をかけようとした、その拍子に意地悪く枝が折れて、
冠といっしょにオフィーリアもすすり泣くせせらぎの中に
そのまま落ちてしまいましたの。着物の裾がいっぱいにひろがって、
人魚のように、しばらくはあの子のからだをささえていました。
水面に浮かびながら、あの子はきれぎれに神をたたえる古い歌を
歌いつづけていたのです。まるで身にふりかかった禍を
少しも感じない人のように、水に生まれて水にすむ
生物かなんぞのように。でも、それもほんの束の間、
水を吸いこんで重くなったあの子の着物がとうとう水底の泥の中に
あのかわいそうな娘を引きずりこんでしまいましたの、美しい歌声も、
それぎり消えてしまいました。

ウィリアム・シェイクスピア 『ハムレット』 第4幕第7場より
三神勲/訳 河出書房新社 世界文学全集 I  シェイクスピア





ジョルジュ・ジュール・ヴィクトール・クレラン 「アザミの中のオフィーリア」
Georges Jules Victor Clairin, Ophelia in the Thistles.