絵画:ウォルター・クレイン 「釣り鐘草(ブルーベル)」 『シンベリン』より
MIDI:バッハ ブランデンブルク協奏曲第6番 第3楽章

Walter Crane, Harebell from "Cymbeline".
MIDI :J.S.Bach, Brandenburg Concerto No.3 in G, BWV1048, 3rd Mvt.




ARVIRAGUS
With fairest flowers
Whilst summer lasts and I live here, Fidele,
I'll sweeten thy sad grave: thou shalt not lack
The flower that's like thy face, pale primrose, nor
The azured harebell, like thy veins.

          (Cymbeline, Act 4. Scene 2. by William Shakespeare)

アーヴィラガス
もっとも美しい花々で、
おまえの悲しい墓を飾ってやろう。
おまえの顔に似た、淡い色の桜草、
おまえの静脈のような、青い筋のある釣り鐘草で。
         (ウィリアム・シェイクスピア 『シンベリン』 第4幕第2場)


アーサー・ラッカム挿絵 『シンベリン』
Arthur Rackham, "Cymbeline".


 シェイクスピアの『シンベリン』(1609年初演)は、古代ブリテンが舞台のロマンス劇です。
 ブリテン王シンベリンの娘イモジェンには兄2人がいましたが、2人とも幼い時にさらわれてしまい、王の世継ぎはイモジェンでした。
 王と後妻である王妃は、イモジェンを後妻の息子であるクローチンと結婚させようと思っていましたが、イモジェンは貧乏貴族のポステュマスと結婚してしまいます。
 王は激怒し、ポステュマスを国外に追放してしまいます。別れ際、イモジェンとポステュマスは、永遠の愛の誓いとして、ダイヤの指輪と腕輪を交換します。
 ローマの友人の館に身を寄せたポステュマスは、そこでイアーキモという男と知り合います。徒然の話しの折、妻の自慢話をきっかけに、女性の貞節を認めないイアーキモとポステュマスは、イモジェンの貞節をめぐる賭けをします。
 イアーキモはイモジェンを誘惑しますが、毅然とした拒絶に諦め、策を弄して彼女の寝室に忍び込み、彼女が眠った後、部屋の中を探り、イモジェンの腕から、ポステュマスの腕輪を抜き取ってしまいました。
 ローマに帰ってきたイアーキモの言葉と腕輪にたぶらかされ、怒ったポステュマスは召し使いのピザーニオに手紙を送り、イモジェンの殺害を命じます。
 ポステシュマスの手紙により、夫に会えると宮廷を抜け出したイモジェンでしたが、ピザーニオに真実を打ち明けられます。夫の不信にイモジェンは途方にくれましたが、それでも夫のもとへ行きたいというイモジェンにピザニオは男装を勧めます。
 男装して名前をフィデーリと変えたイモジェンは、道に迷い洞窟に入りこんだところ、猟師一家に歓迎されます。けれどその洞窟こそ、イモジェンの父王を恨み、王子2人をさらったベレリアスの隠れ家だったのです。
 イモジェンと兄2人は、兄妹とは知らず、一緒に暮らすようになります。ところがイモジェンは、彼らが狩りに出た時に疲れを癒すために、母から貰った薬を飲み、それが強い作用の薬であったため、仮死状態になります。
 それを見つけ、イモジェンが死んだと思った兄アーヴィラガスが言ったセリフが、上記にかかげた「もっとも美しい花々で、おまえの悲しい墓を飾ってやろう。」というセリフなのです。


作者不詳 『シンベリン』より 「イモジェン」
anony, Imogen from "Cymbeline", c.1860.




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