絵画:ケイト・グリーナウェイ 「ハメルンの笛ふき」
MIDI:チャイコフスキー 『くるみ割り人形』より 「中国の踊り」

Kate Greenaway, The Pied Piper of Hamelin,1888.
MIDI : P. I. Tchaikovsky, Chinese Dance from "The Nutcracker".
MIDI提供:Sketch



 『ハメルンの笛ふき』は、中世ドイツに伝わる伝説で、グリム兄弟の『ドイツ伝説集』にも納められています。
 この伝説は、英国のの詩人ロバート・ブラウニングが物語詩にし、ケイト・グリーナウェイがそれを絵本化しました
 中世ドイツ、ハメルンの町に、ネズミが大繁殖すという事件がありました。町中、家中、戸棚や帽子の中、赤ん坊のゆりかごにまでネズミは入り込み、食べ物を齧りつくしました。人間はもちろん、ネコでさえも、ネズミの大群には太刀打ちできませんでした。
 人々が市長のもとへつめかけ、市長や議員たちもネズミ問題を会議しはじめました。そこに不思議な笛ふきの男が現れました。その男は、お金千ギルダーで、ネズミを残らずやっつけてくれるというのです。
 千ギルダーは安くはありませんが、どうにかこの状態から抜け出したいので、市長と議員は承諾しました。
 男は笛を吹きはじめ、笛の音に誘われて、ネズミたちはぜんぶ男についていきました。男はネズミを川へとつれていき、すべて溺れさせてしまいました。



 約束を果たした男は、市長達に千ギルダーを要求しました。市長達は急に千ギルダーがおしくなりはじめました。
 そして「ネズミを殺したのは、お前ではなく川だ」と、お金を払おうとはしませんでした。
 怒った男は出て行きました。
 そしてしばらく後、町から男の吹く笛の音が聞こえてきました。その音に誘われて、今度は町中の子どもたちが、男の後についていきました。そして子どもたちは町を出て行き、二度と戻ってはきませんでした。
 たった1人、足の悪い男の子をのぞいて。
 その少年は、あの日のことを後々まで、語りました。

 あそびなかも もういやしない!
 このかなしみは わすれるものか
 あのひとのいう すてきなくにで
 みんなたのしく すごしてるんだ。
 すぐゆけるよと あのひとはいった
 よろこびのくに しあわせの土地
 みずはゆたかに くだものみのり
 いろとりどりの はなさきにおう
 ふしぎずくめの あたらしいくに。
 くじゃくさながら きれいなすずめ
 いぬもここでは しかよりはやく
 みつすうはちも さすはりもたず
 わしのつばさで うまははばたく。
 ぼくのいたんだ このあしだって
 きっとなおると よろこんだのに。
 笛のねはきえ ふときづくと
 山のこちらに ただぼくひとり
 こころならずも とりのこされて
 いまもあるけぬ このありさまだ。
 にどときけない あのくにのこと!
                         (ロバート・ブラウニング詩 矢川澄子訳)







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