鈴木春信 「見立菊慈童」
MIDI:バッハ 「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻」より メヌエット ト短調
Suzuki Harunobu (1725?-1770)
A Girl Collecting Chrysanthemum Dew by the Stream
, 1765-66.
MIDI : J. S. Bach  Menuett BWV.Anh.113
from 'Aus dem zweiten Notenbuch der Anna Magdalena Bach'



 鈴木春信(1725?-1770)は、江戸時代中期の浮世絵師です。本姓は穂積、通称次郎兵衛、または次兵衛です。

 菱川師宣により花開いた浮世絵は、1765年に大きな革新を遂げます。
 江戸の高等遊民たちによって催されていた絵暦(えごよみ)交換会を契機に、多色摺り版画が発明されたのです。それは、絵師、彫り師、摺り師が協力して刷り出す精巧で華麗な木版画で、数色の色版を自在に摺り重ね、画面全体を色彩で充充填し、浮世絵の色彩表現を完成させた画期的なものでした。
 このカラー版画は、錦絵(東錦絵(あずまにしきえ)、江戸絵)と呼ばれ、江戸を中心に発展します。明和期(1764-1772)以降の浮世絵はこの技法によるものです。
 この多色刷りの版画技術の、創始者が鈴木春信でした。春信が描く可憐な美人を看板娘にして、この錦絵は江戸から全国に広まっていきました。

 このページに飾っている「見立菊慈童」(明和2-3年 1765-66)は、菊の葉の滴が入った水を飲み、童子の姿のまま不老長寿になったという、中国の仙人の伝説が原典となっています。
 けれどその伝説をこの「見立菊慈童」のように、少女に置き換えたのは珍しく、水辺に座り菊を手折ろうとする美少女の姿は、とても可憐で、ロマンチックな雰囲気を出しています。


採蓮美人