絵画:ローレンス・アルマ=タデマ 「見晴らしのよい場所」(1895)
A Coign of Vantage 1895
MIDI:プッチーニ 歌劇 『ジャンニ・スキッキ』より 「私のお父さん」


この「見晴らしのよい場所」は、アルマ=タデマ独特の、めまいのするような高さを感じさせる遠近法を使用した絵画です。アルマ=タデマはこの型破りな遠近法を何度か用いていますが、それがもっとも成功した絵画がこの「見晴らしのよい場所」です。

優雅な衣装に、色とりどりの美しい花冠をつけた3人の女性たちが、ローマ艦隊の到着を見ています。
地中海の壮麗な青と、眩いばかりの大理石の白が、素晴らしいコントラストを見せています。

絵画のタイトル「A Coign of Vantage」 は、シェイクスピアの四大悲劇の一つ『マクベス』からの引用です。

スコットランドの武将マクベスは魔女の予言と妻にそそのかされ、王ダンカンと僚将バンコーを殺して王位を奪います。
"A Coign of Vantage"は、第一幕第六場、殺されるとも知らない王ダンカンと将軍バンコーが、マクベスの城を訪れた時のセリフです。


DUNCAN
This castle hath a pleasant seat; the air
Nimbly and sweetly recommends itself
Unto our gentle senses.


BANQUO
This guest of summer,
The temple-haunting martlet, does approve,
By his loved mansionry, that the heaven's breath
Smells wooingly here: no jutty, frieze,

Buttress, nor coign of vantage, but this bird
Hath made his pendent bed and procreant cradle:
Where they most breed and haunt, I have observed,
The air is delicate.


ダンカン
この城の環境はすばらしい。空気のさわやかさ、あまさに心なごむではないか。

バンコー
夏ごとに神殿をおとずれる岩燕(つばめ)が、このんでここに巣をきずくからには、天の息吹が優にやさしく匂うのでしょう。張出し、小壁、控え壁、見張り台、いたるところに巣をかけて寝床や揺り籠(かご)にしておる。彼らが住みつき雛(ひな)をそだてるところは、例外なく空気こまやかです。


このページに流れているMIDIは、映画『眺めのいい部屋(A Room with a View)』(1986).に使用された、プッチーニの歌劇 『ジャンニ・スキッキ』から「私のお父さん」です。
この『眺めのいい部屋』は、英国の作家E.M.フォースターの小説が原作ですが、タイトルは『見晴らしのよい部屋』と訳されていることもあります。