音楽:レクイエム K.626 “ディエス・イレ(怒りの日)”
絵画:ギュスターヴ・モロー(1826-98) 「出現」(1876)
Gustave Moreau, The Apparition. 1876.
モーツァルトはレクイエム作曲に憑かれたように打ち込みます。
レクイエムの楽譜を書いている夜、
家のドアを激しく叩く音がします。
モーツァルトは、父の亡霊のようなあの男では?と、
怯えて出ようとしませんでした。
見かねた妻のコンスタンツェが出ると、
それはモーツァルトの友人で、
劇場主であり俳優でもあるエマヌエル・シカネイダーでした。
モーツァルトは大衆のための歌劇「魔笛」も依頼されていたのです。
自分の仕事を差し置いて、レクイエムを作曲しているモーツァルトを見て、
シカネイダーは怒り、曲の催促をするのでした。
今お聴きいただいている曲は、シカネーダーがモーツァルト宅を訪れた時に
モーツァルトがレクイエムの楽譜を書いていたシーンに流れていた
レクイエムの“Dies irae(怒りの日)”です。
絵画はギュスターヴ・モローの「出現」です。
テーマは聖書をモチーフにした「サロメ」です。
「サロメ」は、オスカー・ワイルドの戯曲としても有名です。
この「出現」は、モローのもっとも完成された作品で、
3枚ほど描いています。
サロメのポーズは同じですが、バックが違います。
昨年開催された「ウィンスロップ・コレクション」で、
その一つを見ることができて、大感激しました。
サロメはユダヤの王ヘロデの妻ヘロデヤの連れ子です。
ヘロデ王は、自分の誕生日に、サロメに舞いを舞うよう言い、
その報酬として、何でも望みを叶えると約束しました。
サロメは見事に舞を舞い、その報酬として要求したのは、
彼女が報われない恋心を抱いていた、預言者ヨハネの首でした。
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