音楽:『魔笛』 K.620 序曲

絵画:ヴィジェ・ルブラン(1755-1842)
「マリー=テレーズ・シャルロット・ド・フランス、
通称「マダム・ロワイヤル」とその弟、
王大子ルイ=ジョゼフ・ダザビエ=フランソワ」(1784)



モーツァルトはレクイエム作曲に憑かれたように打ち込みますが、
劇場主であり俳優でもある友人エマヌエル・シカネイダーから、
大衆のための歌劇「魔笛」も依頼されていました。

レクイムはモーツァルトの心を追い詰め、衰弱させていましたが、
王子様や王女様、鳥男に大蛇と、無邪気なおとぎ話の「魔笛」は、
その時浴びるように飲んでいた酒と共に、
モーツァルトをほんのひと時明るい気持ちにさせました。

不安を忘れたい一心で、夜遅く作曲を中断して、
父親の肖像を見ながら、
今流れている「魔笛」序曲に合わせて、
おどけて踊るモーツァルトの姿が哀れでした。

絵画はヴィジェ・ルブランの絵で、
フランス国王ルイ16世とマリー・アントワネットの間に生まれた
マリー・テレーズ王女とルイ・ジョゼフ王子の肖像です。
2003年の早春に上野の「ヴェルサイユ展」でこの絵を見ることができて、
あまりにかわいくて、感動しました。

わずか数年後、ルイ・ジョゼフ王子は病気で7歳で命を落とし、
姉のマリー・テレーズ王女は、
フランス革命のため、家族全員を失い、
13歳から17歳までの青春を牢獄で過ごします。
そんな運命を知らず、絵の中の子ども達は無邪気です。