フレデリック・ケイリー・ロビンソン 「青い鳥」 1911年
Frederick Cayley Robinson, The Blue Bird, 1911.


音楽:ガブリエル・フォーレ 『レクイエム』より 「楽園にて」
Gabriel Faure, In paradisum from 'Requiem'.



  


 船に乗って出て行く子どもたちと残る子どもたちの間に最後のざわめきが起こりました。みんな最後のお別れのあいさつをします。

「さようなら、ピエール!」
「さようなら、ジャン!」

「みんないるもの持った?」

「ぼくのこと忘れないでね!」

「きっと見つけるよ!」

「きみの考えを捨てちゃだめだよ!」

「あんまり宇宙のことばかりかまけちゃだめだからね!」

「何かあったら知らせてね!」
「だめだってさ!」

「やれるよ!やってこらんよ!」

「ぼく、君のこと迎えに行くよ!」

「ぼく、生まれたら王様になるんだ!」

 時のおじいさんは鍵と鎌を振りました。
「もういい! いかりがあがった! 出発だ!」

 静かに船は港を出発し、空の向こうへ船は消えていきました。
 遠くから船に乗った子どもたちの声が聞こえました。

「見えてきたよ! 見えてきたよ! 地球だ!
大きいねえ。光ってるよ!
青い海や緑の森が見えるよ。
きれい! きれいだね。
地球はとてもきれいだね」

 はるか地球からは喜びの歌声がひびいてきました。

「あの歌声は何なの?あの子たちの声じゃないね」
 チルチルは光の精に聞きました。

「あれはね。子どもたちを迎えに来たお母さんたちの歌ですよ」