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Thomas Francis Dicksee
Ophelia




トーマス・フランシス・ディクシー 「オフィーリア」 1865年
Thomas Francis Dicksee, Ophelia, 1865.




OPHELIA

And there is pansies. that's for thoughts.
HAMLET, Act 4, Scene 6

オフィーリア

それから、これは三色スミレ。ものを想うしるし。

『ハムレット』 第4幕第6場より



LAERTES
For Hamlet and the trifling of his favor,
Hold it a fashion and a toy in blood,
A violet in the youth of primy nature,
Forward, not permanent, sweet, not lasting,
The perfume and suppliance of a minute.
No more.


OPHELIA
No more but so?

HAMLET, Act 1, Scene 3

レアーチーズ

それから、ハムレット殿下のことだが、殿下の気まぐれなご好意は
結局、若さのさせる一時の浮気だと思わなきゃいけないよ。
早咲きのすみれの花のようなものさ、言ってみれば。
咲くのは早いがすぐしぼんでしまう。見た目にはきれいだが永もちはしない、
あれはただほんの束の間の香り、一瞬の慰めだ、
それだけだよ。

オフィーリア
それだけかしら?


ウィリアム・シェイクスピア 『ハムレット』 第1幕第3場より
三神勲/訳 河出書房新社 世界文学全集 I  シェイクスピア






KING
Sweet Gertrude, leave us too;
For we have closely sent for Hamlet hither,
That he, as 'twere by accident, may here
Affront Ophelia:
Her father and myself, lawful espials,
Will so bestow ourselves that, seeing, unseen,
We may of their encounter frankly judge,
And gather by him, as he is behaved,
If 't be the affliction of his love or no
That thus he suffers for.

QUEEN
I shall obey you.
And for your part, Ophelia, I do wish
That your good beauties be the happy cause
Of Hamlet's wildness: so shall I hope your virtues
Will bring him to his wonted way again,
To both your honours.

OPHELIA
Madam, I wish it may.

  [Exit GERTRUDE]

POLONIUS
Ophelia, walk you here. Gracious, so please you,
We will bestow ourselves.
[To OPHELIA] Read on this book;
That show of such an exercise may colour
Your loneliness. We are oft to blame in this,--
'Tis too much proved--that with devotion's visage
And pious action we do sugar o'er
The devil himself.

HAMLET, Act 3, Scene 1


国王
ガートルード、あなたもしばらくここをはずして下さい。
じつはハムレットがここへ来るように内々で呼んでおいた、
このオフィーリアとここで出会わせる手はずを、
ととのえておいたのじゃ。
ポローニアスとわしとは法のゆるす探偵という各でな、
ここに身をかくして、そっと様子をうかがうことになっている。
こうして、二人の出会いの様子をよく観察して、
ハムレットの悩みがはたして恋のためかどうか、
あれのふるまいから判断しようというのじゃ。


王妃
わかりました。
ねえ、オフィーリア、ほんとにどんなにうれしいだろうね、
ハムレットの乱心が、美しいあなたのせいであってくれたら。
それなら、あなたのやさしい気立てで、きっとまた
あれを元どおりにすることがおできだものね、
そのうえ楽しい式をあげて。

オフィーリア
ええ、わたくしがお役に立ちますなら。

   (王妃退場)

ポローニアス
ささ、お前はここのところを歩いてるのじゃ。陛下、よろしければ、
さっそくかくれましょう。……この本を読んどるのだぞ、
(祈祷机から本をとってオフィーリアに渡す)
そうしてお祈りの本を読んでいれば、ひとりでいても、
けっしてあやしまれないからな。これははなはだよくないことじゃが、
世間にはざらにある。なあ、信心深そうな顔をし、
さも殊勝げにふるまって、おろろしい悪魔の本性の上っ面へ
お砂糖をふりかけるのだ。

『ハムレット』 第3幕第1場より 三神勲/訳



トーマス・フランシス・ディクシー 「オフィーリア」 1864年
Thomas Francis Dicksee, Ophelia, 1864.



[Enter Hamlet]

HAMLET

To be, or not to be- that is the question:
Whether 'tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune
Or to take arms against a sea of troubles,
And by opposing end them. To die- to sleep-
No more; and by a sleep to say we end
The heartache, and the thousand natural shocks
That flesh is heir to. 'Tis a consummation
Devoutly to be wish'd. To die- to sleep.
To sleep- perchance to dream: ay, there's the rub!

- Soft you now!
The fair Ophelia!- Nymph, in thy orisons
Be all my sins rememb'red.

OPHELIA
Good my lord,
How does your honour for this many a day?

HAMLET
I humbly thank you; well, well, well.

OPHELIA
My lord, I have remembrances of yours
That I have longed long to re-deliver.
I pray you, now receive them.

HAMLET
No, not I!
I never gave you aught.

HAMLET, Act 1, Scene 3

  (ハムレット登場

ハムレット

生きる、死ぬ、それが問題だ。
どちらが貴いのだろう。残酷な、
運命の矢弾をじっとしのぶか、あるいは
寄せくる苦難の海に敢然と立ち向かって、
戦ってその根を断ち切るか。死ぬ──眠る──
それだけのことだ、しかも眠ってしまえば、みんなおしまいではないか、
おれたちの心の悩みも、この肉体につきまとう
数知れぬ苦しみも。だとすれば、それこそ願ってもない
人生の終局ではないか、死ぬ──眠る──
眠る!夢をみるかもしれない、そうか、ここでつかえるのだな。
  (中略)
……おお待て、
美しいオフィーリア──森の女神よ、お祈りか、
ぼくの罪のおゆるしもいっしょに願っておくれ。

オフィーリア
(祈祷机から立ち上がって、ちょっとこわばった声で)
あの、王子さま、
この頃はいかがでございますの?

ハムレット
いや、どうもありがとう、大変いい、大変いい、大変いい。

オフィーリア
王子さま、いただいた記念の品をわたくしまだ持っておりますの、
とうからお返ししなくてはと存じておりましたのですけれど。
お受け取りくださいません、どうぞ。

ハムレット
(冷たく)受け取れない。何もあげた覚えはないな。

(彼女の言葉には何か不自然な、前もって用意したようなところがある。ハムレットはそれを感じた。彼は王のたくらみを思い出さないにしても、何かたくらみがかくされているかもしれないことを感じたらしい)

『ハムレット』 第3幕第1場より 三神勲/訳



トーマス・フランシス・ディクシー 「オフィーリア」
Thomas Francis Dicksee, Ophelia.




HAMLET
You should not have believ'd me; for virtue cannot so inoculate our old stock but we shall relish of it. I loved you not.

OPHELIA
I was the more deceived.

HAMLET
Get thee to a nunnery! Why wouldst thou be a breeder of sinners? I am myself indifferent honest, but yet I could accuse me of such things that it were better my mother had not borne me. I am very proud, revengeful, ambitious; with more offences at my beck than I have thoughts to put them in, imagination to give them shape, or time to act them in. What should such fellows as I do, crawling between earth and heaven? We are arrant knaves all; believe none of us. Go thy ways to a nunnery.

HAMLET, Act 3, Scene 1

ハムレット
信じていたとしたら、それは大間違いだぞ。どんなに美徳を接木(つぎき)してみたところで、もとの台木の性質は消えぬからな。おれはほんとは君を愛してなんかいなかった。

オフィーリア
では、大変な思いちがいをいたしておりましたわ。

ハムレット
(祈祷机を指しながら、しだいに熱狂してくる)
尼寺へ行け。なぜ罪な人間を生みたがるのだ?おれなどはかなりまっとうな人間のつもりだが、それでもいっそ母が自分など運でくれなかったらよかったと思うほどたくさんの罪悪を背負いこんでいる。傲慢で、復讐心が強くて、野心深くて、そのほか、まだどんな罪を犯すかわからない人間だ。それを一つ一つ思いつく思惟の力も、それに形を与える想像力も、実行に移す時間もないほどたくさんの罪をおれは担っているのだ。おれのような男が天地のあいだを這いまわって、いったい何ができるというのだ? おれたちは一人残らず大悪党だ、誰をも信ずるな。──尼寺へ行ってしまえ。

『ハムレット』 第3幕第1場より 三神勲/訳






トーマス・フランシス・ディクシー 「オフィーリア」
Thomas Francis Dicksee, Ophelia.



OPHELIA
[Sings]
And will he not come again?
And will he not come again?
No, no, he is dead:
Go to thy death-bed:
He never will come again.
His beard was as white as snow,
All flaxen was his poll:
He is gone, he is gone,
And we cast away moan:
God ha' mercy on his soul!
And of all Christian souls, I pray God. God buy ye.

HAMLET, Act 4, Scene 5

オフィーリア

(歌う)
二度と戻ってこないのかしら?
二度と戻ってこないのかしら?
 いえ、いえ、死んでしまったのだもの。
 いっそ、あたしも死の床へ
帰らぬ人を待つよりは。

おひげの白さは雪のよう、
髪の白さは亜麻の色
 死んで死んで、もういない
 泣いても泣いても、詮ない涙。
どうか神さま、あの人の後生を頼みます!
ついでに、みなさんの後生もお頼みします。
では、みなさん、さようなら。

『ハムレット』 第4幕第5場より
野島 秀勝/訳 岩波文庫



トーマス・フランシス・ディクシー 「オフィーリア」
Thomas Francis Dicksee, Ophelia.



LAERTES
Lay her i' th' earth,
And from her fair and unpolluted flesh
May violets spring! I tell thee, churlish priest,
A minist'ring angel shall my sister be
When, thou liest howling.

HAMLET
What, the fair Ophelia!

QUEEN
[Scattering flowers]
Sweets to the sweet: farewell!
I hop'd thou shouldst have been my Hamlet's wife.
I thought thy bride-bed to have deck'd, sweet maid,
And not have strew'd thy grave.


HAMLET, Act 5, Scene 1

レアーチーズ

墓の中へ入れろ!
そうすれば彼女のけがれのない美しい肉体から
すみれの花が咲き出すわ!(棺が墓の中へおろされる)やい、くそ坊主、
おれの妹はな、きっと立派な天使になっているぞ、きさまが
地獄で泣きわめいている時分にはな。

ハムレット
なに、あの美しいオフィーリアが!

王妃
(花を棺に撒きながら)
美しい乙女には美しい花を。さようなら!
わたくしはあなたがハムレットの妻になっておくれだったらと思っていたのに。
ねえ、あなたの新床を花で飾ってあげようと思っていましたのに、
ああ、こうしてあなたのお墓に花を撒こうなんて。

『ハムレット』 第1幕第3場より
三神勲/訳 河出書房新社 世界文学全集 I  シェイクスピア






トーマス・フランシス・ディクシー 「オフィーリア」
Thomas Francis Dicksee, Ophelia.




HAMLET
I loved Ophelia. Forty thousand brothers
Could not with all their quantity of love
Make up my sum. What wilt thou do for her?

HAMLET, Act 5, Scene 1

ハムレット

おれはオフィーリアを愛していた、たとえ四万人の兄が
ことごとくその愛をあわせて持ってこようが
おれ一人の愛におよぶものか。……きさまはあれのために何をしてやる?

『ハムレット』 第5幕第1場より 三神勲/訳




トーマス・フランシス・ディクシー 「オフィーリア」 1861年
Thomas Francis Dicksee, Ophelia, 1861.




'Doubt thou the stars are fire;
Doubt that the sun doth move;
Doubt truth to be a liar;
But never doubt I love.
'O dear Ophelia, I am ill at these numbers;
I have not art to reckon my groans: but that
I love thee best, O most best, believe it. Adieu.
'Thine evermore most dear lady, whilst
this machine is to him, HAMLET.'

HAMLET, Act 2, Scene 2

“ 星が火と燃ゆるを疑おうと
 太陽が天を巡るを疑おうと
 まことをば偽りなるかと疑おうと
 わが愛は絶えて疑うことなかれ

いとしいオフィーリア、詩を書くのは苦手です。数えきれない心のうめきを
行分けして歌うことはできない。だが、誰より深く君を愛している。ああ、
誰よりも、何よりも。それは信じてほしい。さようなら。

 この体がわがものであるかぎり、いとしい人よ、
 永久(とわ)に君のものであるハムレットより

『ハムレット』 第2幕第2場より
松岡和子/訳 ちくま文庫 シェイクスピア全集1 『ハムレット』