音楽:シューベルト 『冬の旅』より 「菩提樹」 D.911-5

絵画:ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849-1917)

「オフィーリア」(1894)
Jhon William Waterhouse, Ophelia. 1894


ウォーターハウスはは1849年にイタリアのローマで生まれますが、
両親はイギリス人で、父ウィリアムは画家でした。
幼い頃をイタリアで過ごし、1854年に家族と共にイギリスに戻りました。
1870年、ロイヤル・アカデミー美術学校に入学し、
1874年に初めてアカデミーに出品しました。
1885年に、ロイヤル・アカデミーの准会員になり、
その後正会員に選ばれました。

“オフィーリア”はウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の
戯曲「ハムレット」のヒロインです。
内大臣であるポローニアスの娘で、
主人公であるデンマーク王子ハムレットの恋人でした。

王子ハムレットは自分が留学中に父の王が急死しし、
叔父のクローディアスが母のガートルードとすぐに結婚して王となったことに、
疑問を抱いていました。
そんなハムレットの前に父王の亡霊が現れ、
父は叔父に毒殺され王位と妃を奪われたとハムレットに話します。
驚いたハムレットはそれが本当なら復讐すると父王に誓い、
周囲には狂気を装いました。
ハムレットは恋人のオフィーリアにさえ冷たくし、彼女を悲しませます。
ハムレットは王宮の広間で上演される芝居で、
父が殺された状況をそのまま旅役者の一行に演じさせます。
顔色を変えた叔父に、ハムレットは父殺害を確信します。
そしてハムレットは王妃の間に入ると、
母に早すぎる再婚と父に対する不実を激しく非難さします。
その時ハムレットは、壁掛けの奥で物音がしたのを聞き、
王と勘違いして、オフィーリアの父ポローニアスを刺し殺してしまいます。

父を失ったオフィーリアは、ついに正気を失います。
歌を歌ったり、取り留めのないことを口走るようになるのです。
そしてある日、川に落ち、死んでしまいます。

彼女の死は、劇の中で直接は描かれません。
王妃ガートルードによって、こう語られています。

柳の木が小川の上に斜めに、
白い葉裏を鏡のような水面に映して立っているあたりで、
その小枝をとりまぜてあの子は珍しい花冠を作りました、
きんぽうげにいらくさ、雛菊、それから紫蘭、
あれはいたずらな羊飼いたちがもっとはしたない名を付けているけれど
貞淑な娘たちは死人の指と呼んでいる。
垂れ下がっている枝にそのかわいい花冠を掛けようと
あの子が登っていったとき、意地の悪い小枝が折れて、花輪と一所にあの娘は
啜り泣く小川に落ちてしまった。衣裳の裾がひろがって、
それに支えられて、人魚のように暫く浮かんでいるあいだ、
あの娘は切れ切れに古い祈りの唄をうたっていました。
まるで自分の不幸が分からない人のように、
でなければ水に生まれてその中に
棲みなれていた何かのように。けれどもそれもつかのまのことで、
やがて着物が、水を吸い込んで重くなり、
かわいそうなあの子の唄は川底の泥へ
引き込まれて消えてしまった。
(木下順二訳)

ウォーターハウスはこのオフィーリアをテーマに、
3枚の絵を描きました。