絵画:ローレンス・アルマ=タデマ 「パンドラ」(1881)
Sir Lawrence Alma-Tadema Pandora 1881
MIDI:ヴァイス 幻想曲


パンドラは、ギリシャ神話中の人類最初の女性です。
ティターン神族の1人プロメテウスが、天上の火を盗んで人間に与えたのを怒って、
全能の神ゼウスが復讐のために、鍛冶神ヘファイストスに粘土で造らせたのです。

パンドラという名は、“すべてを与えられた”という意味でした。
その名前の通り、パンドラは神々から素晴らしい贈り物を貰いました。
アテナが知恵と機織の技術を授け、アフロディテが美貌を、
アポロンが美しい歌声を授けました。
最後にヘルメスが、“好奇心”と“嘘”を与えました。

パンドラは、プロメテウスの弟エピメテウスの元におくられました。
エピメテウスはパンドラの美貌に惑わされ、
ゼウスの贈り物は受け取ってはならないというプロメテウスの忠告を無視し、
パンドラを妻にしました。

パンドラとエピメテウスには、しばらく穏やかな幸せが続きました。

ところがエピメテウスの家には、美しい金の箱(壷という説も)がありました。
エピメテウスは、この箱だけは決して開けてはいけないと、妻に言っていました。
けれど、ヘルメスから“好奇心”を与えられたパンドラは、
開けてみたくてなりませんでした。

この箱にはプロメテウスとエピメテウスの兄弟が地球上の生物を創造した時に、
不必要とされた災いがつめられていたのです。

何も知らないパンドラは、エピメテウスの留守に、ついにその箱を開けてしまいました。
途端に中から、「病気」「貧困」「戦争」「犯罪」「憎悪」「嫉妬」「老い」などが、
飛び出していったのです。

この時から人間は、あらゆる災いに苦しめられました。

それはゼウスからの復讐でした。
火の使用を覚え、おごり高ぶっている人間を、制圧するための。

パンドラは慌てて、箱の蓋を閉めましたが、総ては遅すぎました。
自分のしたことの重大さに気付いたパンドラは、涙にくれますが、
そんな時、箱の奥に、一つだけ残っているものに気付きました。

それは「希望」でした。

ゼウスの計画通り、この時から人間は、あらゆる災いに耐えなくてはならなくなりました。
けれど、残された「希望」がある限り、人は絶望することなく、生きていけるのです。