
音楽:レクイエム K.626 “コンフタティス(判決を受けた呪われた者は)”
絵画:グスタフ・クリムト(1862-1918) 「死と生」(1916)
Gustav Klimt, Death and Life. (1916)
オペラ『魔笛』の上演中に、倒れてしまったモーツァルトを、
サリエリは家へ送りました。
何も知らないモーツァルトは、サリエリに感謝をします。
送り届けてくれたことはもちろんですが、
何より自分のオペラを観にきてくれたことに。
その時、激しくドアをノックする音がします。
それは『魔笛』のモーツァルトの取り分を持ったシカネーダーでしたが、
サリエリはモーツァルトに、レクイエムの依頼人が来たと嘘をつき、
明日の晩までにレクイエムを仕上げれば大金を出すと言ったと、
モーツァルトの熱で熱くなった手に、お金を握らせました。
モーツァルトは必死になって、作曲しようとしますが、
ペンを握る力さえありませんでした。
そこでサリエリが作曲を手伝うと申し出ます。
モーツァルトはベッドに横たわり、
サリエリはモーツァルトが支持するまま、曲を書きとめます。
それはサリエリが何よりも望んだ瞬間だったでしょう。
神の声のような美しい音楽が生まれる瞬間。
そしてそれを自分が書きとめているのです。

「歌詞はどこから始まる?」
「“悪行多きものは、裁きを受け地獄に落ち、炎に焼かれる”からだ」
「信じる?」
「何を?」
「炎で永遠に焼かれるって・・・」
「もちろん」
「恐ろしいね・・・」
「モーツァルト、始めよう」
「ああ。出だしはコーラスだ。バスが響いて・・・」
今お聞きいただいている曲は、
そのシーンでモーツァルトが作曲し、サリエリが書きとめた
“コンフタティス(判決を受けた呪われた者は)”です。
TOP絵は、クリムトの「死と生」です。

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