音楽:レクイエム K.626 “ラクリモーザ(涙の日)”

絵画:オディロン・ルドン(1840-1916) 「オフィーリア」(1900〜1905頃)

Odilon Redon,
Ophelia. 1900-1905.


モーツァルトとサリエリの不思議な共同作業で、
レクイエムは美しく仕上がっていきます。

サリエリはいつの間にか憎しみも忘れて、
美しい音楽にのめりこんでいきました。
モーツァルトもまた、苦しみも恐怖も忘れて、
病気とは思えぬほど、生き生きと音楽を生み出していきました。

けれどモーツァルトの命の一瞬の輝きもそこまででした。

モーツァルトは笑って、サリエリに言いました。
「あなたに嫌われていると思っていた。許してほしい」
それが彼の最後の言葉になりました。

その時、コンスタンツェが子どもを連れて戻ってきました。
もう一度モーツァルトとやり直すために。

コンスタンツェはサリエリを不審そうに見ると、
レクイエムの楽譜を片付けてしまいます。

モーツァルトは愛する妻と子を見ながら、静かに息を引き取るのでした。

「レクイエム」は、ついにサリエリのものにはなりませんでした。

モーツァルトの葬儀は強い雨の日でした。
レクイエムの「ラクリモーザ(涙の日)」が流れる中、
偉大な作曲家は、粗末な共同墓地へと葬られていきました。