旧古河庭 園

 所在地●東京都西ヶ原1丁目
 交 通●JR上中里駅から徒歩7分。
     またはJR王子駅・駒込駅からでは
     バスで西ヶ原一丁目下車すぐ。
 開 園●9〜16時30分
 入園料●150円
 駐車場●なし
 照会先●旧古河庭園管理所
     電話 03-3910-0394



  「首をおはねーっ!」
トランプの女王が叫ぶと、トランプの兵隊がアリスを追いかけてきます。
アリスは裁判所から庭へと走り、迷路になった生け垣の中をどんどん逃げ、 迷路は追いかけてくるトランプの兵隊でいっぱいになっていきます。
ディズニーのアニメ映画「不思議の国のアリス」のクライマックス。
小さな頃ドキドキしたこのシーンは、実は原作にはないデイズニ−の創作でした。
旧古河庭園のバラ園を見た時、胸が熱くなりました。バラを取り囲む迷路のようなツ ゲの生け垣があったのです。
この迷路のような幾何学的な花壇はイタリア・ルネッサンス様式の影響を受けた15世 紀後半の フランス・ルネッサンス様式を更に影響を受けたもので、16世紀前半イギリス国王ヘ ンリー8世の時代の 宮殿の庭に取り入れられました。
見学もできるイギリスの「ハンプトン・コート」宮殿の庭の迷路には、素敵な、 そして悲劇的な結末を迎えてしまうロマンスの伝説があります。
国王ヘンリー8世は迷路で遊び戯れていた王妃付きの女官達の中で、 アン・ブーリンという女性に恋したという伝説です。
国王はアン・ブーリンと結婚したくて、離婚を許さないカトリック教の教皇と対立し て破門されます。
そしてプロテスタント(新教)色の強いイギリス国教会ができるのですが、 王はそんなにまでして結婚したアンにいつか飽き、無実の罪を着せ処刑してしまいま す。
そして王は結局6人もの女性と結婚してしまいました。
けれど王とアンの間に生まれたのが、イギリスを最強の国にしたエリザベス1世でし た。
ヘンリー8世の時代に花開いた造園は、娘のエリザベスにも引き継がれました。父王 の度重なる結婚のために、 嫡出として正式に認められなかったエリザベスは、廷臣達の挙動を探るためもあった のか、 廷臣の館を好んで幾度も訪問しました。そのため廷臣達は美しい館を造り、美しい庭 園を造りました。
中でも、映画「エリザベス」に出てきた、エリザベスの生涯の恋人といわれるレスター 伯ロバート・ダドリーの 居城「ケニルワース」(イングランド中西部ウォリックシャーにある)の庭園は、王家 の紋章であるバラを中心とした、 とても美しい庭園だそうです。

旧古河庭園は、私が訪れた庭園の中でもっとも杏林舎から近く、JR上中里駅から徒 歩7分、 JR王子駅からではバスで西ヶ原一丁目を下車するとすぐの場所にあります。
明治維新の立役者、陸奥宗光の邸跡で、後を継いだ宗光の次男が古河財閥の養子になっ たことから古河庭園と呼ばれています。
お屋敷らしく、日本風のどっしりとした門構えですが、中に入るとお伽話の世界に迷 いこんだような、 美しい洋館と庭園に出会えます。
まずは大正時代に建てられた石造りの素晴らしい洋館です。
鹿鳴館や旧帝国ホテルを設計した、イギリスの建築家ジョサイア・コンドルによる設 計で、 洋館の前に花壇を中心として3段のゆるやかな階段状の庭園が広がり、上段にはバラ とユッカが植えられたテラス、 中段にはドウダンツツジと左右対称のバラ花壇、そして、最下段はツツジの植え込み になっています。
前述の迷路のような花壇は中段にあります。株数は170株ですが、78種類と品種が多 いのが特徴です。
花壇の向こうには小さな森があり、抜けると風景は一変し、鯉のいる池を中心とした 日本庭園が広がります。
こちらは京都の著明な庭師、小川治兵衛の作によるもので、築山や枯山水があって素 敵でした。
なお、お屋敷の中は事前に予約しないと、すぐには見学できませんが、入口付近に喫 茶店があり、 そこでお茶を楽しむことも素敵です。
バラの季節は5月中旬と10月下旬になります。