音楽:モーツァルト 歌劇『フィガロの結婚』より 「もう飛ぶまいぞこの蝶々」
Wolfgang Amadeus Mozart, Non piu andrai (Le Nozze di Figaro).



絵画:
幼いマリー・アントワネットとモーツァルト
Little Marie Antoinette and Mozart



サリエリがモーツァルトと初めて正式に対面したのは、
モーツァルトが皇帝ヨーゼフ2世に招待された時でした。

サリエリはモーツァルトの歓迎用にマーチを作曲します。
皇帝がその趣向を気気に入って、たどたどしくその曲を弾き始め、
モーツァルトが登場します。

そのマーチを一度聴いただけで覚えてしまったモーツァルトは、
皇帝に代わって、その曲を鮮やかに弾き始めます。
しかも途中から自己流にアレンジしはじめるのです。
サリエリが作曲したシンプルな曲が、輝くように変化します。


その曲はあまりに素晴らしかった。
けれどそれはもはやサリエリの曲ではありませんでした。

弾き終えると、モーツァルトは、けたたましく笑いました。
彼の音楽とは正反対の耳障りな声。

サリエリはかつてないほど激しい怒りを覚えるのでした。





映画でモーツァルトがサリエリの曲をアレンジしたという設定の曲が
このオペラ『フィガロの結婚』から“もう飛ぶまいぞ、この蝶々”です。


またこのモーツァルトとサリエリが初対面した皇帝の招待の席で、
皇帝がモーツァルトに昔話をします。

以前、この客間で君に会ったことがある。
君はまだ6歳だった。
素晴らしい演奏を終えて、立とうとして転んだ。
妹のマリー・アントワネットが助け起こすと、
君はこう言った。

“君は優しいね。
ねえ、僕と結婚してよ”



7歳のマリー・アントワネット
Marie Antoinette, 7 years old.


マリア・テレジアからプレゼントされた衣装を着たモーツァルト
The costume was a gift of the Empress Maria Theresa.



このかわいらしいプロポーズから7年後、マリー・アントワネットは14歳で、
オーストリアを離れ、フランス王太子、後のルイ16世のもとに嫁ぎます。
そしてフランス革命により、37歳の若さで処刑されるのです。

けれどモーツァルトはその死を知ることなく、
その2年前に35歳で亡くなります。

子ども時代の幸せな思い出。
2人はこのプロポーズから後、2度と会うことはありませんでした。