アンドレ・マルティ 「青い鳥」 1945年
André E. Marty, L'Oiseau Bleu, 1945.


音楽:ガブリエル・フォーレ 『レクイエム』より 「サンクトゥス(聖なるかな)」
Gabriel Faué, Sanctus from 'Requiem'



 


 チルチルは夜の御殿の六番目の最後の部屋の前に立ちました。

「この戸だけは開けてはいけない」
 夜の女王は言いました。

「この戸を開けたら、もうお前たちは生きては帰れないよ」

 ミチルは怖がって泣き出し、パンや砂糖の精も逃げ出そうとしました。
 犬のチローだけが言いました。
「坊ちゃん、開けてごらんなさい。わたしがついているから大丈夫ですよ」

 チルチルは勇気を出して戸を開けました。
 そこは美しい花園で青い鳥がたくさん飛んでいました。
 チルチルもミチルも犬のチローもパンも砂糖もみんな大喜びで、次々と青い鳥を捕まえました。

一行はたくさんの青い鳥を持って、夜の国を後にし、待っている光の精の所に喜び勇んで行きました。

 猫のチレットだけが、夜の女王と共に後に残りました。

「あの鳥は取られたかい?」
「いいえ。あれはまだあそこに。月の光のところにとまっていますよ。あまり高いところにいたので、みんな手が届かなかったのです」

「光の精さん、ぼくたち、青い鳥をつかまえたよ!」
「見て!こんなにたくさん!」

 チルチルとミチルが青い鳥を差し出すと、驚いたことに鳥はみんな死んでいました。
 チルチルとミチルはあまりにがっかりして、悲しくて、泣き出ました。犬のチローもうなだれました。

 光の精は2人を抱き寄せて優しく言いました。

「2人ともそんなに泣かないで。これは夢の国でしか生きられない青い鳥です。本当の青い鳥ではなかったのです。だから元気を出して。今度は日の光の中でも生きられる本当の青い鳥を探しましょうね」




ブライアン・ワイルドスミス 「メーテルリンクのあおいとり」
Brian Wildsmith, Maurice Maeterlinck's Blue Bird.