アンドレ・マルティ 「青い鳥」 1945年
André E. Marty, L'Oiseau Bleu, 1945.


音楽:ティルマン・スザート 舞曲集『ダンスリー』より ロンド「なぜ」
Tielmann Susato, "Danserye" - Ronde I 'pour quoy'.






 チルチル、ミチル、それに犬のチローが森の中に入ってきました。
 猫のチレットはすました顔で出迎えました。

「よこそいらっしゃいました。あたし、坊ちゃんがいらっしゃるのをみんなに知らせておこうと思って、一足お先に来たんです。みんなに歓迎するように言っておきました。今度こそきっと青い鳥が取れると思いますわ。あら、犬を連れてきたんですか?森の動物たちは臆病で犬が嫌いだし、犬は木と仲が悪いんですよ」

 チルチルはチローを追い払おうとしましたが、
「だめよ!おにいちゃん!チローがいないとあたし、こわいわ」
 とミチルがチローに抱きついて止めました。

 ミチルの言葉にチローは大喜びです。
「大好きなお嬢ちゃん!なんて優しいんだろう!なんてかわいいんだろう!」
 ミチルに何度もキスしました。

「なんてばかなんでしょう!さあ、坊ちゃん、ダイヤを回してくださいな」
 チレットは言いました。
 
 チルチルは帽子のダイヤを回しました。
 すると木の葉や枝が揺れ、木々の幹が割れて、中から人間の姿をした木の精たちが現れ、がやがやと話し始めました。

「人間だ!小さい人間だ!」
「わしらは人間と話ができるんだ」






 最後に森の王様、年老いたカシの木が現れました。
 やどり木の冠をつけ、緑のコケのふわふわしたガウンを着て、片手は太い杖に寄りかかり、片手は案内役のカシの若木に寄りかかり、肩に青い鳥を止まらせていました。

 チルチルは帽子を取って丁寧に挨拶しました。
「ぼくはチルチルです。あなたの肩に止まっている青い鳥をぼくにくださいませんか。お願いします」

 カシの木は白いひげをなでながら太い声で言いました。
「木こりの息子チルチルよ。お前の父親はわたしたちにずいぶん悪いことをしておるぞ。 たくさんの木がお前の父親に切られた。わしの息子も娘も、兄弟、姉妹、おじもおばも、孫も。わしの一族だけでお前の父親に殺されたのは1万2千もいる」

 チルチルは驚きました。でも、必死に説明しました。
「ごめんなさい。ぼくそんなこと何も知らないんです。父さんも悪気でそんなことをしたんじゃないと思います。青い鳥は妖精のおばあさんの娘さんにあげたいのです。その子は病気で寝ているんです。どうかお願いします。青い鳥をください。その子の病気が治るように」