フレデリック・ケイリー・ロビンソン 「青い鳥」 1911年
Frederick Cayley Robinson, The Blue Bird, 1911.


音楽:モーツァルト 『魔笛』より 「パ・パ・パ(パパゲーノとパパゲーナの二重唱)」
W. A. Mozart, Pa-Pa-Pa(Papageno and Papagena)
from 'Die Zauberflote (The Magic Flute)', K.620.





 金持ちのぜいたくはチルチルたちをテーブルに誘いました。

「さあさ、こちらへいらっしゃい。また宴会を始めるところなんですよ。みんなあなた方をお待ちしておりますよ」

 チルチルは申し訳なさそうに首を振りました。
「どうもありがとう、ぜいたくさん。でも本当に残念ですけれど、ぼく、行けないんです。大急ぎで青い鳥を探さなくちゃいけないんです。青い鳥がどこにいるか知りませんか?」

「青い鳥ですか?わたしたちのごちそうには出たことはありませんねぇ。でも心配にはおよびませんよ。もっとおいしいものがどっさりありますからね。楽しいこともどっさりありますよ」

「楽しいの?」

「ほほほ、楽しいですよ。食べたり飲んだり、眠ったり、何もしないで暮らして、ああ、忙しい忙しい」

「それでおもしろいの?」

「そりゃあ、おもしろいに決まってますよ。何しろ世の中ってものは、ただそれだけなんですから」

「そうでしょうか?」
 光が言いました。

 金持ちのぜいたくは胡散臭そうに光を指差し、チルチルに聞きました。
「誰ですか?あの育ちの悪そうな若い女性は?」

 いつの間にか、犬のチロー、パンの精、砂糖の精はテーブルに連れて行かれ、ぜいたくたちと一緒に飲んだり食べたりしていました。

「チロー!行くよ!パンさん!お砂糖さん!」
 ところがみんな聞こえないようで、わき目も振らず食べ続けます。

「どうしたの?みんな?」

「さあさ、あなたたちもいらっしゃい」
 ぜいたくたちがチルチルとミチルを無理矢理引っ張りました。

「帽子のダイヤをまわしなさい!」
 光の精の声が聞こえました。

 チルチルがダイヤをまわすとぜいたくたちの御殿は消えて、花園に変わりました。
 山ほどあったごちそうは消え、ぜいたくたちが着ていたきれいな服は消え、ぜいたくたちは裸になってしまいました。
 驚いたぜいたくたちは恥ずかしそうに逃げ回りました。