アンドレ・マルティ 「青い鳥」 1945年
André E. Marty, L'Oiseau Bleu, 1945.


音楽:J・S・バッハ ブランデンブルク協奏曲第5番 BWV1050 第3楽章
Johann Sebastian Bach, Brandenburgische Konzert Nr.5 D-Dur BWV1050, 3rd mov.






 ぜいたくたちがいなくなってしまうと、花園の花はいっそう美しく咲き開きました。
 美しい音楽が流れ、木の間から天使のような子どもたちが舞い降りてきて踊り始めました。

 それは“本当の幸せ”たちでした。
 ぜいたくたちが逃げていったので姿を現したのです。

 とても小さくて可愛い幸せたちがやってきました。
 小さな幸せたちはわあっと大笑いしながら奥のほうから駆けてきて、輪になってチルチルミチルのまわりを踊りまわりました。

 チルチルは嬉しくなって光の精に聞きました。

「かわいいね!とってもかわいいね!みんなどこから来るの?誰なの?」

「この子たちは子どもの幸せですよ」

「話できる?」

「多分無理でしょう。みんな歌ったり踊ったり笑ったりするけれど、まだ話はしないのですよ」

「こんにちは!こんにちは!みんなこんにちは!あの子ぷっくり太ってて笑ってるよ!きれいなほっぺしてるね。みんなきれいな服着てるね。お金持ちなの?」

「いいえ、違いますよ。ここだったお金持ちより貧乏の方が多いのですよ」

「貧乏な子ってどこにいるの?」

「あなたが見ても分からないでしょう。子どもの幸せはね、天国でも地上でも、いつでもみんな一番きれいな服を着ているんですよ」

「ぼく、いっしょに踊りたいな」

「それはできないわ。時間がありません。あの子たちが青い鳥を持っていないことは私には分かっています。それにみんな急いでいるんですから。ほら、みんな行ってしまったわ。 あの子たちだって遊んでいるひまはないんですよ。子どもの時は、とても短いんですからね」