絵画:クロード・モネ 「ラ・ジャポネーズ」(1875)
La Japonaise 1875
MIDI:ドビュッシー 「夢」(琴バージョン)

(MIDIはCOSMOS様よりお借りしました)

モネは日本美術、特に浮世絵を愛好しました。
その素晴らしいコレクションは、今もヴェルニーのモネの家に、飾られています。

モネの作品には浮世絵に影響を受けたとみられる作品が多くあり、
その他にも扇など小道具として、日本のものを取り入れたりしていますが、
この「ラ・ジャポネーズ」ほど、モネの日本趣味を描いた作品はありません。

壁には1ダース以上の団扇が飾られ、床の畳(ゴザ?)にも2枚の団扇が置かれ、
派手な赤の着物を着、金髪のかつらをつけた、妻のカミーユが微笑んでします。

この「ラ・ジャポネーズ」は、第2回印象派展(1876)に出品され、
唯一高値で売れた作品でした。
「カミーユ(緑衣の女)」の9年後に描かれた作品ですが、
モネは「緑衣の女」と対になる作品だと言っています。
キャンバスはこちらも縦が2メートル30以上とほぼ同じ大きさで、
モデルは同じカミーユを等身大に描き、
前を向いた女性が右から後ろを振りむくという構図も同じです。

けれど2作品とも、主役は実はカミーユではなく、衣装なのです。
「緑衣の女」は、ドレスの布地の模倣的描写が、
多くの批評家から絶賛された作品でした。
「ラ・ジャポネーズ」もまた金の葉や侍の刺繍が浮き出るようで、
着物の材質感を現しています。
また、衣装の色も緑と赤と、対になっています。

対になっているものは、他にもたくさんあります。
まずモデルのカミーユの髪の色。
「ラ・ジャポネーズ」では、黒髪のカミーユに、わざわざ金髪のかつらをかぶせ、
それは西洋と東洋の齟齬(そご)を協調の意味合いもありますが、
本来の黒髪の「緑衣の女」と対になっています。

そして背景。
暗く簡略化された「緑衣の女」に比べて、「ラ・ジャポネーズ」は、
これでもかと言わんばかりに細かく、鶴や日本女性など、
団扇の図柄が描かれています。

また、多くのモネの絵に登場するカミーユは常に憂い顔で、
19歳の時に描いた「緑衣の女」では、年齢以上に大人びているのにのに、
「ラ・ジャポネーズ」では少女のように、無邪気に微笑んでいるのが印象的です。

「緑衣の女」の日常的世界と、「ラ・ジャポネーズ」の非日常。
カミーユの伏せた目と開いた目、
と次々と二つの絵が対照的であることが分かります。

ほかに「緑衣の女」のリアルさは、マネの影響を大きく感じましたが、
「ラ・ジャポネーズ」のカミーユの顔は、ルノワールの柔らかさを感じました。

最後にカミーユの持つ扇について。
フランスの国旗の、赤、白、青のトリコロール(三色)となっていて、
カミーユの金髪のかつらと共に、違和感が強調されています。

MIDIは、フランスの印象派の作曲家ドビュッシーのピアノ曲「夢」の、
琴バージョンにしてみました。