太陽の東・月の西
(4)


北の風の家に近づくと、急にひんやりしてきました。
氷のようなひえびえとした風が吹き、北風が怒鳴りました。

「何の用で来た?」

「私ですよ。弟の南風です。
乗せているのは、太陽の東・月の西の城にいる王子の花嫁。
どうか兄さん、この娘をそこまで運んでやってください」

「むずかしい。
一度その城まで吹いたことがあるが、
飛ばすことのできたのはポプラの葉が、たった1枚さ。
しかもその後くたびれ果てて、何日も吹くことができなかった。
だがその娘が本当に行きたいなら、連れていってもいいさ」

朝早く娘は北風に乗って旅立ちました。

北風の吹きぬける土地は嵐、海は大しけ。
いく百の船が難破しました。

北風が疲れ、波頭が足につくほど低く落ちていった時、
城が見えました。

娘はつぶやきました。

「ありがとう。3人の魔女。
ありがとう。東西南北の風の兄弟。
わたくしは王子に会うことができそうです。」


*   *   *   *   *


太陽の東、月の西の城。
娘は窓の下に座り、魔女からもらった金のりんごで遊んでいました。

そこに現れたのが、3メートルの長鼻姫でした。

「なんてきれいなりんご。
ねえ。その金のりんごを取りかえっこしておくれよ」

「お金では取りかえられません。
けれどもし、この城に住んでいる王子と会うことができましたら。
そして今晩、ずっと一緒にいられましたら」

金のりんごがどうしてもほしかった長鼻姫は承諾しました。

娘はその夜、王子の部屋を訪れました。

「ああ、あなた。わたしはまいりました。
長い旅、遠い旅、つらい旅をしてまいりました」

駆け寄った娘に、王子は無言でした。
魔の眠りに落ちて、呼んでも、ゆさぶっても起きないのです。

無情にも朝が来て、長鼻姫は娘を追い出してしまいました。

娘は昼になると、昨日と同じように窓の下で、
金のくしで髪をすいていました。
長鼻姫はまた、くしがほしいと言いました。

娘は同じ願いを言いました。
願いは聞き届けられましたが、
その夜も王子は目を覚ましませんでした。

次の日は金の糸車。
娘が糸をつむいでいるのを見て、長鼻姫はまた欲しがりました。

そして娘は同じ願いを言いました。

「王子と一夜、過ごせましたら」